それが必要な事ならば、相手が天人だろうが人間だろうが斬ってきた。

それこそ男でも女でも老人でも子供でも。

 

 

 

 

俺はが好きだ。

こんな職で色恋なんて馬鹿げているだろう。けど、確におれにとってはは必要な存在で。

一番隊副隊長としても、一人の女としても。

もうこれは好きとかそういうレベルじゃなくて、言葉で表しちゃいけないんじゃないか、って思うくらいで。

でもそれでもあえて言の葉を使うなら大切で、愛しい、そんな感じ。守りたいと思うし、側にいて欲しい。

俺の命に変えても守りたい、のに。

 

 

 

 

さん!!」

「!」

「!?」

 

それは一瞬のようで、一瞬ではなかった。

確に一瞬のはずだが、まるでスローモーションを見ているような、嫌な感覚。

見ただけで何故が動かないかは分かった。

刀を握り締めて物陰から飛び出して来たガキの両親は、先日が手にかけた攘夷志士だったから。

けどそんな事はどうでもよくて、というか色々考える前に身体が動いていた。

 

「う゛、ぁ…」

「!…そ、ご…」

 

間一髪でガキに峯打ちを喰らわせたけど、少し遅かったようでの左脇腹から少し血が滲んでいた.

は呆然としていたようだったけど、俺と目が合うと刀を構え直した。

 

 

 

 

 

 

 

「沖田隊長、全ての標的の確認終了しました!取り逃がした者はおりません。」

「…おぅ」

 

報告しに来た隊士に下がっていいぜィと付け足して、山崎に手当てしてもらっていたの方へと歩いて行く。

 

「…どーでィ?具合は」

「…カスリ傷だから…」

「…そーかィ、で、」

 

何で避けなかったんでさァ?と問う。

 

「…」

「アンタが刺されればあのガキの気が済むなんて馬鹿なこと、思っちゃいねーだろ」

「…はい」

 

おそらくそんな事は思ってねェだろうが。

そんな甘いモンじゃない。人の命を奪うっていうのは。

とっさに峯打ちですませた自分に内心苦笑しながら(俺も甘くなったか?の命を狙ったヤツなのにとか思いながら)、続ける。

 

「じゃァ、どーしたんでィ。理由言ってみな」

「…、昔の、私みたいだったから、」

「!…」

 

それを聞いたら、もう怒れなくなってしまった。

…最初から怒りたい訳じゃないんだけど、

 

「…ごめんなさい」

「…このバカ

「!沖田隊ちょ、」

 

周りで見守っていた隊士が声をあげ、殴られると思ったのかぎゅっと目を瞑るの額で、指を弾く。

 

「いっ、」

「デコで済ませてやらァ、感謝しな。…いいか、」

「?」

「人はいつか死ぬ。だから死ぬなとは言わねェ。だがな、」

 

座っていると目線を合わせる為しゃがみこむ。

 

「お前が絶対死んじゃならねェ場合が2つある。1つは、自分より弱いヤローに殺られる事。今回はまさにこのパターンだな」

「…はい」

「んでもって2つ目は、…俺の居ねェ所で死ぬ事」

「!」

 

「…間に合わなくて、悪ィ」

 

傷口を見ていたらまたさっきの光景が蘇ってきて、情けないけど声が震えた。

怖いんだ、失うのが。

 

「…総、…沖田隊長」

「…何でィ」

「さっきは本当にすみません。…助けて下さってありがとうございます」

「…何度だって助けてやらァ、だからどこへも行くな」

 

 

 

らしくない、そう思ったけど。

 

 

(アンタより大切なモンなんて、持ってないんでィ)

 

 

ヒロインside→20額