「はい!今年はフルーツタルトに挑戦してみましたー♪」
「きゃー美味しそう!!」
「流石ね」
「すごーいちゃん!」
「えへへ…」
今日はバレンタイン。
今はランチタイムなため、給湯室ではチョコレートでは無いが手作りのお菓子を配っていた。
「わぁ慈乃さんのも美味しそう!」
「ありがと」
ただし、相手は男ではなく、女。
いわゆる友チョコというヤツだ。
そう。今の給湯室に居るのは、蘭美、慈乃、綾寧。
元々女の特刑が少ないせいもあって、四人は仲も良い。
だからこの友チョコ交換はもう結構前から毎年恒例で。
ちなみに毎年と慈乃は手作りお菓子、蘭美は購入した高級チョコレート、綾寧は手作りの小物、と自然と決まっていて。
の作るお菓子は美味しいと評判だし、慈乃の作った物も本当にお店で売ってそうな程の出来栄えだ。
どちらかと言うとの方が家庭の味で慈乃の方はお店の味。
「可愛いー!綾寧ありがとー!!」
「喜んでもらえて嬉しい」
今年綾寧がに作ったのは料理用のミトン。
綾寧は毎回それぞれに合った、日常生活で使える物を作ってくれるのだ。
「今年は蘭美さん笑ちゃんにあげないの?」
「何ソレ!!去年はあげたみたいな言い方しないでよ!っていうか何でアイツ!?」
そのと蘭美の会話に慈乃が溜め息をつき、綾寧が笑うのも毎年恒例。
ただ、一つだけ、違う事が。
一方ドアの外では…
「…何やってるんですか?式部副隊長」
「わ!羽沙希くん!」
しー、っと口に人指し指を当てて小声になる式部。
藤堂は首を傾げながらも大人しくそれに従う。
「笑太くんに頼まれてお茶取りに来たんだけど…入りづらくて」
「でもいいわよねー 私なんて何にも作れないもん」
そう言って蘭美はのタルトを眺める。
「え?でも蘭美さんセンスいいじゃん!毎年凄く美味しいし…
愛が詰まってれば何でもいいのよ そーゆーモノは」
「!あーもうホント可愛いわねアンタは!!」
そう言って笑うに蘭美が抱きついく。
ぼのぼのとした空気が流れた。
「あら」
ふと蘭美がの持っていた紙袋を覗いた。
そこにはまだ丁寧に包装されたタルトが並んでいる。
「コレ何?」
尋ねたとたん、の肩がピク、と跳ねた。
「えーっと、それはまだ…三上さんとか…」
その言葉に慈乃、綾寧も袋を覗いた。
確かに毎年義理チョコ、というかお世話になった礼にと色々な人にはお菓子を配っている。
自分の部隊はもちろん、第一、第三、諜報科…等々キリがない。
もっとも毎年それらは昼休み前に配るのだが今年は中々皆に会えず、まだ配り終えないままココに来たのだ。
しかし蘭美が聞いてきたのはそんな事じゃないと自身分かっていて。
「…一つだけラッピングが違うわね」
「本当だ」
覗きこんだ二人も気付き、呟く。
はまだ蘭美に抱きつかれたままで身動きがとれない。
「ふーん」
蘭美がニヤリ、と笑う。
はひたすら愛想笑い。
「…誰にあげるのかしら?」
「………え、っと」
言いなさい、と目が言っている。
確かに袋の中には一つだけ他とは異なるモノがあって。
もっと隠せば良かった、と思いながらも気付かれてしまった以上どうしようもない。
中々終わらない二人の目線による攻防に慈乃がそのへんにしときなさい、と言うとちぇ、と蘭美も顔を膨らませながら離れる。
「まぁいいわ ホラ」
そう言って蘭美がドアを開けると―
「え?」
「あ」
そこには、式部と藤堂の姿が。
「ホラ行くわよ慈乃、綾寧」
「え?え??」
そのまま何が何だか分からないを残し三人は給湯室を出ていく。
「えっと?」
そして式部を給湯室に押し込めると―
「じゃぁまた後でね!…式部、泣かせたら許さないから」
そう言って、そのままパタンとドアを閉めた。
「「………(もしかしてハメられた!?)」」
呆気にとられた二人を残して、四人分の足音が遠ざかっていった。
「藤堂も面倒なコトやらされたわねー」
「いえ別に」
御子柴に藤堂が頼まれた仕事は、式部を給湯室の前で足止めする事。
万が一入りづらくてそのまま帰ってこないように、という理由で。
式部との思った通り、二人はハメられた訳で。
もっとも、一つだけラッピングの違うお菓子をが持っている事に気付いたのは、が法務省に来て最初に会いお菓子を渡した人物、柏原なのだが。
つまりもう、皆グルだ。
「えっと…何かごめんね 立ち聞きとかするつもりなかったんだけど…」
「う、ううん全然…」
毎年義理を渡していた相手にいざ本命を渡すとなると緊張も尋常ではなくて。
でも自分達をハメた人達にはきっとこの気持ちはバレている訳で。
あーもう女は度胸!と心の中で叫んでは包みを取り出した。
「!」
「…私っ!…清寿のことが好きです」
恥ずかしくて顔は見れなかったけれど、そう言って包みを差し出した。
「ありがとう」
手から包みが離れた感触と降ってきた言葉にが顔をあげると、式部は頬をちょっと赤く染めて笑っていて。
「僕も、ちゃんの事好きだよ」
「!」
さっきまでもうこれ以上熱くならないんじゃないかってくらい熱かった顔が、もっと温度を増した様に感じた。
開けてもいい?と問う式部に頷く。
「え?コレ…」
包みの中はタルトと…ガナッシュ。
「清寿だけ、チョコなの。タルトはおまけ」
「!」
そう言って、恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに笑う。
そういえば毎年皆に配るお菓子は、一度だってチョコの年は無かったな、と式部は思い出した。
つまり、この職に就いてからからバレンタインチョコレートを貰ったのは式部が初めて、と言うことだ。
「美味しいよ…ありがとう」
その後降ってきたファーストキスは、甘い甘いチョコの味。
First Valentine
END・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
という訳でバレンタインフリー夢、清寿でした。
やっと季節イベントでDOLLS書けました!(汗)
さんと式部をくっつけちまおう部隊が結成された、というお話です。(え)
フリー夢ですので気に入って下さった場合はご自由にお持ち帰り下さい!
ローズドロップス/秋山美雨羅 (070213) ※配布期間は終わりました