雨は嫌い。

この身に染み込んだ血は流してくれない癖に、嫌なモノばかり見せるから 

 

 

 

ドアに寄りかかって座る。ぼーっと一点を見つめてどれくらいたっただろうか?ふと影が出来、上から声がふってきた。

「…何してんだ」

「…笑ちゃん」

室内着のままマンションの廊下に座り込むあたしを見て溜め息を付きながら笑ちゃんは言った。

「せめて部屋入ってろよ。風邪引くぞ」

「…"目"、嫌い」

いくら自分達の身を守るためと言っても、いつも"見られている"のは気分が悪い。…特に、今日みたいな日は。

あたしがうつ向いてそう答えると笑ちゃんはやれやれ、という風に頭をかくとストンと隣に座り込んだ。

「…風邪引いちゃうよ」

「…お前なぁ。呼ぶから来てやったってのに…お前置いて部屋入れってのか?」

良く見ると濡れている。…傘も持ってないし、急いで走ってきてくれたのかな。…風邪引いたらあたしのせいだよね。

そう思って立ち上がるといきなりの事に驚いたのか、笑ちゃんが「ぉわっ!?」って間抜けな声あげてビビってたから笑ってしまった。

「…ごめん、入って。ホントに風邪引いちゃう」

「…おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って寒ッ!」

何だこの部屋。入った瞬間思わず呟く。別に冷暖房類がついていた訳ではなさそうだけど、…さっきまで雨の中に居たからか?

寒すぎんだよ、何でお前は平気なんだ。

「…寒くねぇの?」

「は?いや別に」

言いながらはい、と差し出されたタオルを受け取る。

「うーんやっぱお風呂入った方がいいかな。支度してくるね」

そう言ってバスルームへと歩き出したの腕を、ほぼ反射的に掴んだ。

…このままだとこの薄暗い部屋に紛れてが消えてしまいそうだったから。(ってありえないだろ)

柄にもなくそんな事を思ってしまうのは全てコイツのせいだ。

「…いい加減言えよ」

「っ笑ちゃ…」

「また嫌な夢でも見たか?」


−死なないって、約束してくれる?−

−…は?−

 

「…夢、見たの」

昔の会話を思い出していると、俺の腕の中で震える手で服の裾を掴んでいたが消えそうな声で呟いた。

「…どんな?」

「…笑ちゃんと、もう二度と会えなくなる夢」

はぁ?俺って信用無いのか?死なないってあの時約束したのに

「…お前勝手に俺の事殺すなよ」

そう言って頭を撫でてやると首を横に振って顔を上げた。珍しく涙がこぼれそうになっている瞳を見て、ギクリとする。

「おい…」

「笑ちゃんじゃなくて、あたしが死ぬ夢」

そう言うとまた下を向いてしまったから、俺はどうする事も出来なくて。

 

 

「…お前は死なねぇよ」

「…死ぬのが怖かったんじゃないんだ。笑ちゃんに会えなくなると思ったら、怖かっただけで」

やっとの事でそう言うと、また消えそうな位小さな声で返事が返ってきた。

 

 

思い切り抱き締めた。(でないと本当にが消えてしまいそうだったから)いつも笑って任務だってちゃんとこなして。

けど本当は弱いんだ、は。…弱いと言うより儚い感じかもしれない。

「…お前、俺が告ったトキなんつったか覚えてるか?」

「え?」

 

 

−死なないって約束してくれる?−

−…は?−

−…病気とか、年とかで死ぬのはしょうがないけど、任務で、とかそーゆーのでは死なないって約束して−

一生側に居てとは言わないよ。けどたとえいつかあたしとの愛が冷めてもずっと生き抜いて、あたしを一人にしないで。

 

 

「俺に死ぬなって言っただろ?」

「ぇ、あ…」

「けどな、俺だってお前が居なくなったら後追うかもしれねぇからな」

せっかく我慢していたのに、の瞳が大きく見開かれたから、涙が少し流れた。

「だから俺に死なれたくなかったらお前も生きろ」

 

−生きる理由が有れば、人は簡単に死なないよ−

 

の言ったセリフがふいに頭に浮かんできて、自然とそんな事を言っていた。

するとだんだんとの瞳がいつものように落ち着いてきて、

…きたかと思うと笑いやがった。(コイツ…)(それは馬鹿にしたような笑いじゃ無くて、切なそうな)

「やっぱ笑ちゃん大好きだなー」

それに悪い夢って人に話すと正夢に成らないって言うし。そう言って俺の首に腕を回して抱きついてきた。

…相変わらず立ち直りも早いな。まぁそれくらいでないと特刑なんてやってられないけど。

「てか良いの?天下の総隊長さんが一人の女の為にあんな事言って。ココ"特刑の目"の部屋なんだけど?」

「バーカ。それならお前だって"あのが泣いた"って今頃大騒ぎだっての、向こうは」

 

 

 

神様なんて信じないけど、これからも二人で生きていく為に、どうか死ねませんように。

 

 

 

「あーやっぱ神サマに願うとか性に会わねぇな」

「じゃぁあたしは笑ちゃんに誓うよ」

「おーいいんじゃねぇかソレ。じゃ、俺もに誓うかな」

 

 

 

I promised unless I wished that I cannot die and died(死ねないと願って死なないと誓った)

 

END………………………………………………………………………………………………………………………………………………

DOLLS夢祭り「My Dear」に提出させて頂いた作品です。時間かかった割にあまり上手く出来なくて残念です。。

けど、楽しかったです!ありがとうございました!!(060717)

 

サイトUP(070102)

タイトルは、選択式御題からです