屋上でサボり?若いうちにしか出来ない事は

 

全部やっとけやっとけ




 

空は快晴。風も弱すぎず、強すぎず、ちょうど良い感じ。

ただ気温が32度というものっそい暑い日で、授業なんて受ける気も起こらない。

 


四時間目が始まって少し経った頃、屋上への階段を登るあたしが居た。

別にいつもサボっている訳じゃない、というか滅多にサボる事は無い。

何だかんだ言って銀ちゃんの授業は面白いし、ウチのクラスも面白くて明るくて好きだから。

今日はたまたま自習だったから来ただけ。

さっきまで教室では

よっしゃァァァ!!自習だ!プロレスでもやんね?

何でだよ。

ドサクサに紛れて今日こそ土方殺してやりまさァ。そしてチャイナ、この前の決着つけてやらア。

総悟ォォォォォ!!

望むところアル!も参戦するネ!!

みたいな会話が飛び交っていたんだけど今日は何だか朝から眠くてしかたなくて、

ごめん眠いから寝てくるわって言ってひらひら手をふって、教室を出てきたのだ。

 

 

 

 

 


「ふぁー!!良い風」

てか室内より外の方が涼しいっておかしくね?

良く「暑さに負けて勉強しないなんて」みたいなコト言って説教する先公いるけど、

職員室で冷房20度とかガンガンにして授業中もうちわで扇いでるオメーらに言われたくねーよと思う。

(28度設定はどうしたんだよ!!そして先公は扇いで良くて生徒はダメってどんな規則だァァァァ!と叫びたくなります。アレ?作文?)

その点屋上は良い。

でもいくら涼しいと言っても夏の紫外線は馬鹿に出来なくて、日焼け止めを塗っても油断は禁物だ。

だから天辺に有る貯水タンクのこう…うまい具合いにちょうど良く陰が出来るところに寄りかかって寝るのが

最近のあたしのお気に入り。

あたしはそこへ座ると伸びをして、ケータイのアラームをセットしようかと思ったけど、どうせ次は昼休み。

きっと総悟がココに来てくれるから別にいいか、と考えて目を閉じた。

 

 

 

いつから総悟とご飯を一緒に食べ始めたか、具体的な日付は覚えていない。

ただ総悟がお弁当忘れて偶然ココで寝ていた日に偶然屋上に来たあたしのお弁当を一緒に食べてから

「じゃぁ次はお礼に俺が昼メシ奢ってやりまさァ。教室だと土方がウザイから、明日もココでまってて下せェ」

みたいな事を言われて、それから習慣化した。

…何故そのセリフをあたしの単純な脳が覚えていられるかと言うと、

…その、ぶっちゃけ総悟のコトが好きなんだよね。

多分アイツはそんな事ミジンも気付いていなくて、あたしなんかただの友達なんだろうなと思う。

(それでも一緒に居られるだけ良いんだよなぁ。ホント3ーZで良かった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

***

ギィィとドアの開く音で目が覚めた。

否、起きれない。

(あ…れ?)

良くさ、頭は起きてて周りの音とか聞こえるんだけど体は起きれない…冷静に分析すると金縛り?


みたいな状態になる事が有るじゃない?今、まさにそんな感じ。

(総悟かなぁ起きたいんだけどな)

すると後からもう一人分の足音が聞こえてきて、ああ二人か。と思った。

案の上、聞こえてきたのは総悟に告白する女子の声。

 

総悟はモテる。

そんな事はもうえ?今更?みたいな感じだったし、何度かそーゆー現場も見てきた。

モテるくせに今まで誰かにOKをした話は一切聞かなくて。

でも「何で誰とも付き合わないの?」なんて聞けるわけない。怖いもん。

 

(てか今回相手悪くね?)

この声は何度か聞いたことが有った。

隣のクラスの「ミス銀高」みたいな存在のお金持ち美人お嬢様、春日崎さんだと思う。

どうしよう今回はヤバイ。逆玉の輿じゃね?

てか何でお嬢様、こんなサド丸出しに惚れてんの!?ってあたしもだけど!!

てか体動け!いやいや動いてどうすんの?起きたいけど!!あぁもうあたしはどうでもいいからどうか!!

どうか神様、総悟の口からNOの単語をォォォォ!!

 

そんな感じでパニくっていたら、今まで静かだった屋上に総悟の声が響いた。

 

「悪ぃけど、あんたとは付き合えないんでィ」

 

よ、良かったぁ!!と思ったのもつかの間、次の瞬間お嬢様こと春日崎さんからとんでもない言葉が発せられた。

 

 

 

 

 

「じゃぁ、キスして下さい。そしたらもう諦めます」

…えェェェェェ!?お嬢様ァァァァァ!??てかどうしよう凄く嫌だ。嫌だ嫌だ止めて!

きっと今のあたしが起きていたらとんでもない顔になってると思う。でも、今はそんな事どうだっていい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、お願い。

 

 

 

 

「それも出来ねェ。俺は本当に好きなヤツにしか、キスしないって決めててんでィ」

 

その言葉を聞いたとたん、安心したのと同時に胸の奥がズキンと痛んだ。

(じゃぁ、やっぱあたしはアウトオブ眼中ですか)

総悟の言い方からして、多分好きな人が居るんだろう。そして、多分キスはその子にしかしていない。

ならキスなんてされた事も無いあたしは完璧違う。

(明日からやっぱお昼一緒すんの止めよ。…今日で最後かぁ)

 

 

いつの間にか完全に脳も体も覚醒していて、こんな顔総悟に見られたくないと思ったあたしの選んだ手段は体育座りでした。

(…何で?)

自分でもどうせなら寝たフリすれば良かったのにと思いながら。

(あ、でも寝顔見られるよりマシかな)

 

 

 

 

 

 

 

 

「何してんでィ。そんな隅で」

パンツ見えますぜィと上から声が降ってきた。

 

 

「…サイテー」

 

呟いて体ごと回転させた。

 

総悟にパンツも、顔も見られない様に。

 

 

「…今の、聞いてましたかィ?」

どうして今一番触れたくない話題を持ち出すんだ、コイツは。

「ばっちり聞いてましたー。相変わらずモテモテですねェ沖田くんは」

「…」

「さっきなんか学校一の美人じゃん。付き合えば良かったのに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心にも無い事を、言った。

 

ホントは誰とも付き合ってなんて欲しくない。
その瞳に、あたしだけを映してほしい、なんて。

 

「…どんなに想われたって、一番想って欲しい人が好いてくれなきゃ、意味無いだろィ」

 

 

涙が、溢れてきたのが分かる。ヤバイヤバイヤバイ。

早くここから逃げたい。

「それにだって人気あるんですぜ。彼氏とか作んないのかィ?」

ああもう駄目だ。彼氏?作りたいにきまってんだろォォ!

総悟限定だから難しいんだよ無理なんだよ。

 

「…たった一人の人が気付いてくれないんだもの。仕方ないでしょ」

 


そう言って立ち上がる。

「総悟もさぁ、いつまでもあたしなんかとお昼食べないで好きな子のトコ行きなよ。…あたし今日委員会有るの忘れてた。じゃね」

 

「待ちなせェ!」

「っうわ!?」

 

そのままタンクの後ろのハシゴを掴んで屋上に跳び降りるつもりで走り出しかけたあたしの手を総悟が掴んだ。

珍しく荒げた声に驚いてバランスを崩したあたしを、総悟が後ろから支えて倒れた。

 

 

 

 

 

 

「ってぇ。あぶねーなァ」

「なっ!離してよ!!」

 

つまり背中から抱き締められている状態で。普段のあたしならバレない様内心喜んでると思うけれど

さっきあんな事聞いたばっかりで素直にお礼を言えるほど、あたしは大人じゃ無いんだよ。

好きな人の幸せを願って身を引く、なんてドラマのヒロインみたいなコト、出来ないんだ。

…最初から、身を出してもいないけど。

 

「…何怒ってんですかィ」

「あんたはこの涙が見えないのか。怒ってなんかないわよ」

 

 

ヤケクソ気味にそう言った。

「見えませんねィ。さっきからずっと、が俺の方見てくれませんから。てか助けたんだから礼くらい言え。バカ

「…っ何でよ!?大体誰のせいで…っ!」

思わず振り返ってしまったら、最初に目に入ったのは総悟のドアップで。

次に感じたのは、唇にやわらかい感触ー。

ちゅ、ともう一度額にキスをした総悟は、「やっと俺を見てくれましたねィ」と笑って言った。

そんな総悟と反対に、あたしの頭は全く回らない。

え?今の何今の?

 

 

 

 

 

「な…んで…?」

戸惑いながらやっとの思いでそう言うと、ぎゅ、とお腹に回された総悟の腕の力が強くなる。

トン、とあたしの肩に顎を乗せると、目を閉じて言った。

 

 

「…さっきの話聞いてたんだろィ。…本当に好きなヤツにしか、キスしねぇよ」

「…」

 

 

…つまり何ですか?あたしの事好きだって、そんな風に都合良く考えて良いの?

 

 

「本当はの気持ち確かめてからするつもりだったんでさァ。けど、どうしても俺を見て欲しくて」

(
その瞳に、俺以外の男が映るなんて耐えられなくて)

 

気が付いたらキスしちゃってたんでィ、と付け加えて笑う。

 

 

「悪かったな」

「…ばか。何で謝んのよ。…あたしだって総悟の事が大好きなんですよコノヤロー」

 

 

一瞬総悟の腕が揺るまったスキをついて、手を伸ばして正面から抱きついた。

 

「…そうかィ。そりゃぁ良かった」

 

顔を挙げたらちょっとだけ顔を赤らめた総悟と目が合う。

 

 

 

どちらからともなく、口付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ、昼休み終わっちゃった」

 

唇を離すのとほぼ同時にチャイムが鳴った。

「五時間目はサボり決定でさァ。先に昼飯食いやしょう」

「うん!総悟の作るご飯美味しいんだよね!!…って”先に”って何”先に”って」

「何って決まってまさァ。心が繋がったら次はカラダ…「わーーー!!」

 

 

…どうしようそんな事言われたらせっかくのお弁当の味が…てか貞操の危機だよ!!

 

 

 



「…っふぉい!」

「(…変な声…)明日の弁当楽しみにしてますぜィ」

「…うん」

 

 

 

「…

「うん?」

 

 

 

「…愛してますぜ」

その後盛大に咳き込んだたあたしの声と総悟の笑い声が、広い屋上に響いた。

 

 

 

 

 

 

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は、初銀魂夢です!!長かっ…た。

総悟とさんは毎日交代でお弁当作ってくるという設定でした。。(061003)