こちら二番隊、東都大通りにて人形副隊長と女を確認。任務遂行しますか?」

「一緒に居る女は誰だ?第四部隊のか?」

「いえ、焦茶のロングヘアに瞳はグレー、の特徴とは一致しません」

「…了解、10分後に任務遂行せよ」

「了解」


Pink Blue Sweet Day

 


「久しぶりだよねーvv清寿と出かけるの!」

「そうだね。休みが一緒なんてそうそう無いし」

「でもさぁ、バレないかな?最近物騒だし」

「大丈夫だよー」

 

 

東都大通りを二人の男女が歩いている。

男の方は全体的に黒っぽい服にロングのストレートヘアーで、一見女に見間違えられそうな整った顔付きだ。

実はこの男、特別死刑執行刑務官部隊、通称"特刑"副隊長の式部清寿だったりする。

ここで普通なら隣に居るのは同じく特刑の第四部隊に所属するのハズなのだが、今横を歩いているのは容姿こそ整っているものの、

派手な服装にロングのウエーブがかった髪、グレーの瞳、といったように式部の彼女とは似ても似つかない女である。

 

 

「あー幸せ!!次は何処に行く??」

「うーん。あ、あのお店なんか良いんじゃないかな?」

「あ、いいかも!!じゃぁさっそく入ろうか??」

 

会話も弾み、腕を組んで歩く二人は誰がどう見てもお似合いカップルというヤツだ。

しかも二人ともカナリの美人、という訳ですれちがう人が次々と振り返っていく。

しかしそんな視線も当の本人達はまったく気にしていない(というか気付いていない)様でお互いの顔しか見ておらず、

楽しそうに食事をしたりショッピングをしたりといわゆるデートをしていて、今は次の目的地へ入ろうと信号待ちをしているところだった。

ソレが青になり、人々が一斉に渡りだす。

しかし横断歩道を渡り切った式部が女を連れて入ったのは目的の店の隣に位置する裏路地だった。

 

「…清寿?」

女が不安げに式部を見上げる。それに大丈夫だから、と頭にポン、と手をのせて答える。

そして路地の一番奥、行き止まりの壁まで行くとくるりと振り返った。

 

「いい加減、出てきたらどう?」

式部がそう言い終わらないうちに二人の行方を黒に身を包み顔を包帯で隠した"人形狩り"が遮った。

「気付いていたのか?」

「ええ」

「女を連れたままよくそんな気になるものだな」

淡々と会話に応じる式部の袖を女がぎゅ、と掴もうとした時

ー肉が切り裂かれる音と血の臭いが一瞬にして広まり、何人かの人形狩りが叫び声をあげる間も無く倒れていった。

「っせ、清寿!!」

「!!」

だが一瞬のスキを付いて一人の男が女を捕え、首元に剣をつきつける。

 

一般人を人質にしたのだ。

「別にコイツがどうなっても良いから連れてきたのだろう?女が何人もいて良い御身分だな?人形副隊長」

「っ!彼女を離せ!」

 

状況は、最悪。

嫌な沈黙が流れた。

しかしその時最初に口を開いた人物は意外にもさっきまで脅えていた女だった。

「…貴方達は、あたしみたいな一般人も殺す気ですか?」

「!…ああそうだな」

「…ふーん。最低ね?人形人形って言ってるけどあんた達なんて只の人殺しじゃない」

先程とはうって変わり強気な態度ではっきりと言う。

「っこのアマ…!」

キレた男が剣を振りかざした。

!ちゃ…!」

 

 

だがソレは振り下ろされる事無くキインという音と共に弾かれた。続いてほぼ同時に男が血を流して倒れる。

「っな!」

別の人形狩りが驚いたように声をあげ、武器を構える。

「残念…うまく行けば人質として、本部あたりに連れてってくれるかと思ったのに」

言いながらスル、とウイッグを取った。

「!!貴様!か!!」

なんと、その女は式部の他の女などではなくが変装したものだったのだ。

「ちなみに瞳はカラコンね!」

言いながら襲いかかってきた男を仕込んでいたナイフで斬る。

ちゃん…そう簡単にバラしちゃヤバイんじゃない?」

「清寿だってあたしが変装解く前に名前呼んだじゃない」

「…あはは、ごめん」

背中会わせで戦いながらの会話。

清寿が遠距離兼中距離型に対してが近距離型、と相性バツグンの二人に敵うわけもなく次々と人形狩りは倒れ、

やがて立っているのはと式部だけとなった。

 

 

「あーあ、この服何げに気に入ってたのに」

うわーと言いながら返り血の着いた上着を摘んだ。

式部は携帯で特刑と連絡を取っている。

「笑太君達来てくれるって」

パクン、と閉じるとの方へ向き直る。

ちなみに黒いとはいえ式部の服にも血は付いていた。

「およ?うちの隊長達は?」

「デスクワーク、忙しいらしいよ?」

それを聞いたは今日非番で良かったと呟いた。

 

 

「それはそうと、ちゃんはどういうつもりで変装してたの?」

突然ニッコリ笑いながら、しかし確実に声のトーンが下がった式部の言葉にがビク、と肩を震わせた。

「え、えと…」

「特刑二人だと狙われやすいから一般人が居れば大丈夫、って理由で今までしてきたんだよね?」

「う、うん…」

もちろん、一人の場合でも変装はしていたのだが。

「でもさっき、まるで囮みたいな言い方してたよ、ね?」

「う゛;」

怒られる!とぎゅ、と目をつむり身構えたを式部はそっと抱き締めた。

「って、え?せ、清寿??」

予想外の事が起き、は慌てる。

「次からは僕も変装するから。  危ない目に遭わせてごめん」

す、と力を緩めると今度はが式部の背に手を回した。

ちゃん?」

「心配かけて、ごめんね」

それを聞くとクス、と笑いちゅ、との額にキスを落とした。

 

 

 

 

 

 

「…お前らまたハデにやったな」

「「あはは;」」

二人の有り様を天辺から爪先まで見て、御子柴が呆れたように言った。

死体処理なら彼等の仕事では無いが万が一まだ何処かに人形狩りが潜んでいたら、という訳で念のため来たのだ。

 

「あはは、じゃねぇよ!ったく…あっちに車停めてあるから着替えてこい」

「え?もしかして服持ってきてくれたのー?」

「…お前らのロッカーに有ったヤツだからな」

「わーい!!ありがと!笑ちゃん!」

 

服がある=すぐにデート再開出来る、という考えが浮かび二人ともはしゃぐ。

早く、と御子柴に再度急かされ車へと走っていった後ろ姿は何処にでもいるただの幸せそうなカップルだった。

 

「…あいつらもう今日は変装する気無ぇな」

「でも、似てますね、式部副隊長とさんって」

「お?お前にもそう見えるか羽沙希。…ま、本人達は気付いてないんだろーがな」

 

 

 

 

 

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という訳で式部夢第二段です♪
総隊長はメガネで変装してたけど、清寿が外歩く時そのままだったのでこんなネタに…;

というかうちのDOLLSカプ達はみんな皆に見守られている気がします…。(ワンパターンって認めろよ)    (061003)