第九訓 お化けと幽霊の違いって何? 1
「あれは今日みたいに蚊がたくさん飛んでる暑い夜だったねェ… 俺友達と一緒に花火やってるうちにいつの間にか辺りは真っ暗になっちゃって」
ここは真選組屯所。
只今階段話の真っ只中である。
「いけね 母ちゃんにブッ飛ばされるってんで帰ることになったわけ それでね ちらかった花火片付けてふっと寺小屋の方見たの」
今話しているのは稲山さん。
懐中電灯を顔に当て、話続ける。
「そしたらさァ もう真夜中だよそんな時間にさァ 寺小屋の窓から赤い着物の女がこっち見てんの」
隊士達の中には冷や汗を流す者も。
「俺もうギョッっとしちゃって でも気になったんで恐る恐る聞いてみたの 何やってんのこんな時間にって」
ごくり。
皆が唾を飲んだ。
「そしたらその女ニヤッと笑ってさ」
「マヨネーズが足りないんだけどオオ!」
「「ぎゃふアアアアアア!!」」
暗かった部屋に、パッと明かりがともった。
「副長オオオオオ!!なんてことするんですかっ大切なオチをオオ!!」
「しるかァ マヨネーズが切れたんだよ!買っとけって言っただろ 焼きそば台無しだろーがァ!!」
「もう十分かかってるじゃねーか!なんだよそれもはや焼きそばじゃねーよ「黄色い奴」だよ!!」
そんなことを叫びあっていると…
「アレ局長?局長オオ!!」
「大変だァ 局長がマヨネーズで気絶したぞ 最悪だアアア!!」
なんと、先程のマヨネーズ発言に近藤が口から泡をふいて倒れていた。
くだらねぇ、と呟いて土方は隣の部屋に戻る。
「幽霊なんぞいてたまるかってんだよ」
煙草に火をつけ、肩に止まった蚊を叩く。
「んだ 最近やたら蚊が多いな」
その時ー
死ねェ〜
死ねよ〜土方〜
お前頼むから死んでくれよぉ〜
聞こえてきた声に思わず煙草を落とす。
まっ…まさかホントに…
思いきって戸を開けると。
ビクッとした様子の、庭に立っていた沖田と目が合った。
頭にはロウソク。
そして部屋の前の廊下に座っているが。
「…何してんだてめ〜ら こんな時間に?」
「ジョ…ジョギング」
「コ、コーチ?」
「ウソつくんじゃねェ そんな格好で走ったら頭火だるまになるわ!!儀式だろ?俺を抹殺する儀式をひらいていただろう!!」
「やだな〜土方さん」
「自意識過剰な人だ そんなんじゃノイローゼになりますぜ」
淡々と答える沖田と。
「何を…!!」
その時土方は屋根の上に"何か"が居る気配を感じた。
「?」
「どうしたんだィ土方さん?」
「総悟、 今あそこに何か見えなかったか…」
「いいえ何も…」
「あたしも別に…」
けど、確かに今居たのだ。
"何か"が。
「ぎゃああああ」
「「「!!」」」
その時、屯所の中から叫び声が聞こえてきた。
「ひでーなオイ これで何人目だ?」
「えーと 十八人目でさァ」
「結構やられちゃいましたね…」
あれから幽霊か何者か分からないものに、隊士達の半分以上がやられてしまった。
さすがにここまでくると薄気味悪い。
そして情けない。
「トシ…俺は違うぞ マヨネーズにやられた!」
「「「余計言えるか」」」
「じゃぁ後はやりますので」
「おう、悪いな」
そういって近藤、土方、沖田は戻っていった。
はタオルを絞ると一人一人の頭に乗せていく。
現在無事なのは近藤、土方、沖田、、山崎と数人くらいだ。
それに先程近藤が山崎に「拝み屋を街で探してきてくれ」と頼んだのを聞いてしまった。
はっきり言って拝み屋なんて胡散臭いし、余計心配だ。
「…何にも、起こらないといいけど」
ミーン ミーン
木から逆さまに吊されているのは左から順に新八、銀時、神楽。
何でも山崎が連れてきた拝み屋というのは万事屋メンバーがコスプレ?したニセモノだったらしく。
隊士達の看病が一段落ついたが戻ってくると、丁度そんな場面だった。
「悪気は無かったんです…仕事も無かったんです」
新八が弁解を始める。
「夏だから オバケ退治なんて儲かるんじゃねーの って軽いノリで街ふれ回ってたら…ねェ銀さん?」
それでもまだ銀時は昔から霊とか見えるとかなんとか言っている。
沖田の後ろにメチャメチャ怒ってるババアが見えるとかなんとか。
「心配いらねーよ 俺達を解放し水を与えれば全部水にながすってよ」
「そーかわかりやした じゃあコレ鼻から飲んでくだせェ」
「あ、総悟コレも」
沖田は飲んでいた炭酸を銀時にかけ、も飲んでいたお茶を追加分、と言って沖田に渡した。
「誰か助けてェェェェ!!」
「おい トシ そろそろ降ろしてやれよ いい加減にしないと総悟とがSにめざめるぞ」
「何言ってんだ アイツらはサディスティック星からやってきた王子と姫だぞ もう手遅れだ」
やっと降ろされた万事屋メンバー。
本来なら叩き斬るところだが生憎今日はそんな暇もない。
「あー 幽霊恐くてもう何も手につかねーってか」
「かわいそーアルな トイレ一緒についてってあげようか?」
プッ、と笑う銀時と神楽。
全くもって、懲りてない。
「武士を愚弄するかァァ!!トイレの前までお願いします チャイナさん」
「お願いすんのかィィ!」
結局近藤は神楽に付き添われてトイレに言ってしまった。
…………。
このことは他言しないでくれ、と土方は頼む。
「相手に実体があるなら刀で何とでもするが 無しときちゃあこっちもどう出ればいいのか皆目見当もつかねェ」
「え?何?おたく幽霊なんて信じてるの 痛い痛い痛い痛い痛いよ〜お母さ〜ん ここに頭怪我した人がいるよ〜!」
「お前いつか殺してやるからな」
左手を押さえて叫ぶ銀時。
「まさか土方さんも見たんですかィ?赤い着物の女」
「もしかして、昨日の?」
沖田とが尋ねた。
そういえば昨夜、屋根の上にとか言ってたっけ、と。
「わからねェ…だが妙なモンの気配は感じた。ありゃ多分人間じゃねェ」
「「「痛い痛い痛い痛い痛いよ〜絆創膏持ってきてェェ!!できるだけ大きな 人一人包みこめるくらいの!」」」
「おめーら打ち合わせでもしたのか!!」
左手を押さえて叫ぶ銀時、沖田、。
「赤い着物の女か…確かそんな怪談ありましたね」
「!」
何でも新八の通っていた寺小屋でもそんな会談があったらしい。
「それで何してんだって聞くとね…」
「ぎゃあああああああああああああ!!」
突然近藤の叫び声が聞こえた。
皆一斉に走り出す。
「ゴリラーどうしたか〜 チャックに皮はさめたか!?」
ドンドンと神楽がドアを叩くが無反応で。
「神楽どーした!?」
「チャックに皮がはさまったアル」
銀時達が駆け込む。
「あ!!」
「どけ!!」
土方がドアを蹴り破ると。
………。
「なんでそーなるの?」
便器に顔を突っ込んだ近藤の姿があった。
NEXT・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
幽霊のお話に突入です。
ヒロインさんは土方、銀時レベルまで怖がりではないという設定です。
あと土方さん抹殺儀式はヒロインさんは見ていただけです 笑 (070207)