第三訓 昔の人はよくカエルなんて食ったもんだ だって見るからにマズそうじゃん
「えー みんなもう知ってると思うが
先日宇宙海賊"春雨"の一派と思われる船が沈没した」
ここは真選組屯所。
ちなみに今は朝のミーティング中だ。
…局長の話なんて誰も聞いてないけど。
「しかも聞いて驚けコノヤロー なんと奴らを壊滅させたのはたった二人の侍らしい………驚くどころか誰も聞いてねーな」
ミーティング中のはずなんだけど、誰も聞いてない。
「トシ」
近藤がそう言うと隣に座っていたトシー土方は何処から取り出したのかバズーカを担ぎ上げ、打った。
…隊士達に向けて。
「えー みんなもう知ってると思うが 先日宇宙海賊"春雨"の一派と思われる船が沈没した」
ここは真選組屯所。
ちなみに今は朝のミーティング中だ。
「しかも聞いて驚けコノヤロー なんと奴らを壊滅させたのはたった二人の侍らしい……」
「え゛え゛え゛え゛え゛!!マジすか!?」
今度は皆話を聞き、声を揃えて驚きのリアクションをしたがそれがかえって土方の勘に触る。
「しらじらしい もっとナチュラルにできねーのか」
「トシ もういい話が進まん」
そんな土方を制して話を続けた。
「この二人のうち一人は譲夷党の桂だという情報が入っている」
「(ヅラ?じゃぁ一もう人は…?)」
桂、と聞いてが少しピク、と反応した。
彼女が考え込んでる間にも、話は進んでいく。
「その麻薬の密売に幕府の官僚が一枚かんでいたとの噂がある」
「(…ここであたしがゴチャゴチャ考えても、仕方ないか)」
「真選組の出番だ!!」
近藤の言葉では思考を止め、顔をあげた。
「こんの野郎は…」
土方が発見したのはアイマスクを付けて爆睡している沖田と、寝てはいないものの隣に腰掛ける。
「寝てる時まで人をおちょくった顔しやがって。つーかお前も起こせや」
「えーだって可哀想だし…てか後が怖いんで」
「…まぁいい立て。オイ起きろコラ 警備中に惰眠をむさぼるたァどーゆー了見だ」
は渋々立ち上がり土方は剣を抜き沖田につき付ける。
「何だよ母ちゃん今日は日曜だぜィ ったくおっちょこちょいなんだから〜」
「今日は火曜だ!!」
のそのそと沖田もアイマスクを外した。
「つーか母親ならもっとさん見習うとかしたらどーですかィ。怒りっぱなしの母ちゃんなんて鳴らなくなったリコーダー並にいらねぇや」
「お前母親を何だと思ってんだァァ!!」
しっかりツッコミを入れつつスカーフを掴み沖田を立たせる。
「てめー こうしてる間にテロリストが乗り込んできたらどーすんだ?」
「土方さんも人のこと言えないと思います」
「もう黙ってろ 仕事なめんなよコラ」
「俺がいつ仕事なめたってんです?」
「お?」
「俺がなめてんのは土方さんだけでさァ」
「よーし!!勝負だ剣を抜けェェェェ!!」
土方が再度怒鳴りが始まるか!?と身を引こうとした瞬間ー
ガン ガン コン
「「「い゛っ」」」
最後の()は少々軽めだが三人とも近藤に殴られる。
「仕事中に何遊んでんだァァァ!!お前らは何か!?修学旅行気分か!?枕投げかコノヤロー!!」
ガン
「い゛っ」
「お前が一番うるさいわァァァ!!ただでさえ気が立ってるというのに」
「あスンマセン」
今度は近藤さんがガマに殴られた。
てめぇもうっせーよ、と突っ込みたくなっただが一応幕府の官僚という事で抑える。
怒鳴り散らした後捨て台詞を吐いてガマガエルは去っていった。
「なんだィありゃこっちは命がけで身辺警護してやってるってのに」
「お前は寝てただろ」
不機嫌そうに言う沖田に冷静にツッコむ土方。
「幕府の高官だかなんだか知りやせんが なんであんなガマ護らにゃイカンのですか?」
四人で、縁側に腰掛ける。
「総悟 俺達は幕府に拾われた身だぞ 幕府がなければ今の俺達はない」
確かにそうだ。
けど、地球に来て戦争時代多くの人間を殺したのも、
廃刀令を出させて侍の居場所を奪ったのも天人だと言うことも事実。
そして今も尚、幕府の上に登りつめて人間を支配、圧力をかけているのも天人。
そして何より、天人が地球に来なければ自分は近藤達と出会うことはなかっただろうと思うと、は少し複雑な気持ちになった。
そんな事を考えていると、遠くの方で山崎の叫び声が聞こえてきた。
…大方ミントンでもやって土方にボコボコにされているのだろう。
「総悟よォあんまりゴチャゴチャ考えるのは止めとけ、…もな」
「!」
「目の前で命狙われてる奴がいたら いい奴だろーが悪い奴だろーが手ェ差し伸べる それが人間のあるべき姿ってもんよ
…あ゛っ!!ちょっと!」
「…」
そう言うと近藤は好き勝手に動くカエルー禽夜の方へ走っていってしまった。
「はぁ〜底無しのお人好しだあの人ァ」
「…そーだね」
「それよりさん何やら考え込んでたみてェですが…大丈夫ですかィ?」
「!うん。大丈夫だよ。しょーもない事だから」
「そうですか、」
ドオオオン!!
その時物凄い音が響いた。
皆の視線が一斉に近藤と禽夜に集中する。
禽夜に向けて撃たれた玉を近藤が盾になり受けたのだ。
それは近藤の肩を貫く。
「局長オオオ!!」
「山崎!!!!」
土方の合図で山崎は逃げた犯人を追い、は手当てのため救急箱を取りに走る。
他の隊士達は近藤に駆け寄った。
「近藤さん!!しっかり」
「局長オオ!!」
「フン 猿でも盾代わりにはなったようだな」
「!」
後ろで吐き捨てられた禽夜の言葉に反応した沖田が剣を抜こうとしたが、土方に止められた。
「止めとけ 瞳孔開いてんぞ」
「念のため安静が必要ですが、玉は貫通してますし命に別状はありません」
手当てをしたは怪我の状況を報告すると、水の入った桶とタオルを持って外へ出た。
中では犯人についての報告を山崎が始める。
「水換えなきゃね…あ、総悟」
報告が終わると皆まだあのガマを護るのか、と不満を口にした。
近藤さんに向かって言った言葉が、どうしても許せない。
しかし土方の言葉に、再び何かを動かされた。
昔、居場所を作って迎え入れてくれたのも、
廃刀令が出ても自分達を見捨てなかったのも、
失くした剣をもう一度取り戻してくれたのも、
全部全部、近藤さんだ。
…幕府じゃない将軍でもない。
ましてや天人でも、ない。
「俺の大将はあの頃から近藤だけだよ」
信じてついてきたのは、近藤さんだ。
「大将が護るって言ったんなら仕方ねェ 俺ぁそいつがどんな奴だろーと護るだけよ」
言いながら戸を開ける。
「気にくわねーってんなら帰れ 俺ァ止めねーよ」
外に出て歩き出した土方の視界に、ありえない光景が飛込んできた。
一瞬固まるのも無理はない。
「何してんのォォォォォ!!お前ら!!」
「大丈夫大丈夫死んでませんぜ」
その光景とは、今回真選組が護るはずの禽夜が、木で作った十字架に縛り付けられ足元で火を焚かれるというものだった。
…沖田とに。
「、おま、水換えに行ったんだろーがァァ!!」
「え、いやその時総悟と会って…」
「手伝ってもらったんでさァ 要は護ればいいんでしょ?」
「そうそう」
「これで敵おびき出してパパッと一掃 攻めの護りでさァ」
「貴様ァこんなことしてタダですむと…もぺ!」
抗議の声をあげた禽夜の口にが薪を突っ込んだ。
「タダですむと…何だってんだ?あ?こんくらいで痛がってんじゃねーぞガマ」
近藤さんはもっと痛かったんだ、と心の中で呟いて。
「性格変わってんだけど つーかホント総悟に似てきたな」
「何言ってんでィさんは元からSですぜ」
「マジでか」
「いやいや違うから」
総悟も薪を突っ込み始める。
「土方さん。俺もアンタと同じでさァ」
「むが!」
「早い話 真選組にいるのは近藤さんが好きだからでしてねェ」
近藤さんがお人好し、なんて皆知ってる事だ。
そして皆そんなところに救われて、惹かれた。
「でも何分あの人ァ人が良すぎらァ 他人のイイところ見つけるのは得意だが悪いところを見ようとしねぇ」
…あたしの事も簡単に拾っちゃってさ、は少し昔の事を思い出して少し笑った。
「俺やさん、土方さんみてーな性悪がいてそれで丁度いいんですよ真選組は」
「…近藤さんの分も、人の悪いところ見つけないとね」
「フン」
土方は少し笑うと焚き火に手をかざした。
「あーなんだか今夜は冷え込むな…薪をもっと焚け総悟、」
「「はいよっ!!」」
「むごォォォォォ!!」
禽夜の叫び声など完全シカト。
「もぐらっはめっそ !」
意味不明な言葉を発した禽夜の頬を銃弾がカスった。
「天誅ぅぅぅ!!」
「奸賊めェェ!!成敗に参った!!」
それを合図に譲夷浪士が門を破り現れる。
「どけェ幕府の犬ども 貴様ら如きにわか侍が真の侍に勝てると思うてか」
「おいでなすった」
「自意識過剰な奴らねぇ」
「派手にいくとしよーや」
沖田、、土方も剣を抜く。
走り出そうとした時、声がかかった。
「まったく喧嘩っ早い奴等よ」
「「「!」」」
叫んだのは、近藤だった。
「トシと総悟、に遅れをとるな!!バカガエルを護れェェェェ!!」
三人は振り返って笑うと、剣を構えなおした。
「行くぞォォ!!」
翌日、真選組の活躍を新聞が盛大に報じた。
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2ヶ月ぶりの更新です…。
真線組の中では一番好きな話です。
本当は春雨の話も銀ちゃんとかと接触させて書こうかと思ったんですが(途中まで書いてた)都合良すぎるかなと思い止めました。
…決して面倒だったとかじゃないですよ。…多分。
…原作に追いつく様がんばらないと。。 (070111)