第ニ訓
真剣勝負つったって、ホントに真剣でやんなくてもよくね? 木刀でいこうや 木刀で
「そーいえば知ってます?土方さん」
「あ?」
「近藤さんが最近ストーカーしてるらしいです」
今日の市中見回りは土方と。
土方は煙草をくわえながら、は団子を頬張りながら歩いていた。
「…誰から聞いた。そしてお前いつ団子なんざ買った?」
「局長のは風の噂、ゴリラのストーカーが居るって噂です。団子はさっき土方さんがマヨについて熱く語っていた時です」
律儀に一つ一つ答える。
「…」
本来なら怒鳴る所だが馬鹿らしくなって止めた。
この際ゴリラ=近藤?という方程式は置いておこう。
「…テメェ、最近総悟に似てきたな」
「ほんなほほないへすよ!」
「何言ってんのか分かんねぇよ!!」
マヨネーズについて語ったのは20分程前。
(いったい何本食ってんだか)
鬼の副長と恐れられている土方でも、には甘いところがある。
仕事中に買い食いをしても殴られないのはと沖田だけだ。
…沖田の場合は殴りたくても避けられる+反撃があるからなのだが。
「そんなこと無いですよ!っていったんですよ!ってあれ?」
最後の一本を食べ終えるとこれまた律儀に返事を返したのだが、何やらこれから渡る橋の真ん中ら辺が騒がしい事に気付き足を早める。
「ってオイ!」
土方も慌てて後を追った。
「すいませーん」
「オイオイ何の騒ぎだ?」
橋の上で河原の方を見物していた野次馬に声をかける。すると返って来たのは意外な言葉で。
「エエ女とり合って決闘らしいでさァ」
「女だァ?」
「へぇ。いいじゃないですか、とり合って貰えるなんて幸せですよ?」
土方が呆れた様に言うのに対しては羨ましそうに言う。
(…コイツ…自覚無しかよ)
「ったく、くだらねェどこのバカが…あ」
「「近藤局長」」
「…帰るか、」
「…そうですね」
「副長オオオオ!!」
翌日の朝一番で屯所内に響きわたった声だ。
「局長が女にフラれたうえ」「女を賭けた決闘で汚い手使われ負けたってホントかァァ!!」
土方に向かって一斉に隊士達が叫ぶ。
「女にフラれるのはいつものことだが」「喧嘩で負けたってしんじられねーよ!!」
「銀髪の侍ってのは何者なんだよ!!」
一部あれソレ局長に対して酷くね?的なセリフもあったが皆局長の強さを信じているから負けたなんて思えないのだ。
それに対して冷静に答える土方。
「会議中にやかましーんだよ。あの近藤さんが負けるわけねーだろが。誰だくだらねェ噂たれ流してんのは」
煙草の煙をはき、隊士達を睨みつける。
「沖田隊長とさんがスピーカーで触れ回ってたぜ!!」
また一斉に二人の方を指差し叫ぶ。それにお茶をすすっていた沖田は湯飲みを置くとニタァと、は再びお茶を飲むべく湯飲みを取るとクスと笑い答えた。
「俺は土方さんにききやした」
「あたしはきのうモロ現場見ちゃいました」
「…総悟にしゃべった俺がバカだった」
せっかく嘘を付いて喧嘩っ早い隊士達を沈めようとした作戦を台無しにされて土方は頭を抱える。
「まァ先にさんが教えてくれましたけどねィ」
「そうだったね」
目の前で声を揃えて抗議した為、現在進行形で山崎がキレた土方に介錯されそうになっているが茶をすする沖田とはお構い無しに会話を続ける。
「それはそうと、心当たり無いんですかィ?銀髪の侍」
「…た、多分」
あの近藤さんに勝つ銀髪の侍。
一瞬銀時が脳裏をよぎったが確信は無いし下手に言うと面倒だと思ったので止めた。
いつの間にか騒がしかった部屋がしん、と静まりかえり土方の大きな溜め息が聞こえ、
不思議に思ったが顔をあげると左頬を思いきり膨らませた近藤がニカ、と笑って立っていた。
「近藤さーん!お茶持ってきましたぁ!」
「おーう!悪いな!入ってくれ!」
「はーい!」
自室で仕事をする近藤の所へお茶と茶菓子を持ったが来た。
す、とお盆を机に置くとじーっと頬を見つめる。
「ん?どした?」
「あ、いえほっぺた大丈夫ですか?と思って」
言いながら手招きされた通り、近藤の横にストンと座る。
「おー!心配してくれたんだな!大丈夫だ!!…けどお妙さんがなぁ…アレも負けたって事になるよなぁ…近付けないなんてな…」
最初はガハハと笑って言ったが急に肩を落とすとホントに大丈夫か?と言いたくなる程下を向いてブツブツ言い始めた。
(もう戻ろうかな…)
苦笑し、何て声をかけようか迷ったが"お妙さん"と言う単語を聞いてヒク、との顔が引きつった。
実は先日銀時と再会し、神楽や新八と仲良くなりたいと思ったは非番の時は万事屋に遊びに行っていたのだが、
この前偶然新八の姉も来ており気が合って色々話し込んだのだ。
…そう、彼女の名前は"妙"。
未だブツブツ言っている近藤に恐る恐る尋ねた。
「あ、あの〜ちなみに喧嘩相手の名前とか…」
「ん?銀時か??けどアイツ強いよなぁ」
次にガクッと肩を落とすのはの番だった。
(どうしよ…土方さん総悟と見回り行ったよね?見付けたら絶対斬る!って目が言ってたし…)
「?何だ?知り合いか??」
「…あーハイ。昔の…仲間です」
面倒な事になったと頭を抱える。
「じゃぁトシ達探しに行くか!」
コト、と筆を置き近藤が立ち上がる。
「へ?」
「心配なんだろ?トシは本気でやりそうだしなぁ」
(…流石近藤さん。てかあたしそんな顔に出してたかなぁ…出してたか)
「…どちらかといえば土方さんの方が心配ですけどね」
「ハハ」
言いながらも立ち上がり近藤の後をついていった。
「お、いたいた」
「あれ?来たんですかィ」
普通より高い建物の屋根の上に沖田を見付けた近藤とは同じ様に登ると、声をかけた。
下は土方と銀時の戦いがバッチリ見える。
「…銀ちゃん」
やはり銀髪の侍とは自分の良く知る銀時で。ハァ、と溜め息を付き沖田の隣に座った。
「やっぱり知り合いだったんですかィ」
屯所での質問に少し動揺していた事が気になりはしていたが、当たり前の様に銀髪の名前を呼んだに沖田が問うた。
「…まぁ…あ。」
丁度その時決着が着いた。
結果は、土方の負け。
「負けちゃいました、ね」
「…フフ面白エ人だ 俺も一戦交えたくなりましたぜ」
口に葉をくわえながら笑う。
「やめとけ お前でもキツいぞ総悟」
(やっぱ腕ナマって無いなぁ、銀ちゃん)
「アイツは目の前では刃を合わせていても全然別のところで勝手に戦ってるよーな男なんだよ
勝ちも負けも浄も不浄も越えたところでな」
(それって、まるでさんじゃねぇですかィ)
「さんはあの人に勝った事有るんですかィ?」
「お!そうだ!なら勝てそうだな」
けれど、の瞳は、何かを懐かしむように遠くを見ていた。
「そんな事より、土方さん来るまでそこのお団子屋さんで待ちません?」
近藤と沖田が何か声をかけようとした時、ニッコリ笑って言いながら振り返ったに二人も笑い店に入った。
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第四話です!何だかんだでお互いの事を想ってる、それが真選組だと思います。(お前に言われても…)
(061003)