一人廊下に腰掛けて、庭を見る。
只今ここは休み時間中。
庭では生徒達がちゃんばらごっこをしていたりして遊んでいる。
…というか、殆んど皆が剣を振り回しているのだが。
「は混ざってこないのかい?」
「…松陽先生。今は、そんな気分じゃないんです」
あたしの、大好きな先生。
こんな時代だから女の子は滅多に塾とか寺小屋なんてものには通わせて貰えないのが普通だ。
だからちょっと前までは夕方帰ってくる銀ちゃん達を待って、それから一緒に遊んだりしていた。
そんなあたしを、ここに連れてきてくれたのが先生。
「君が?」
「?…はい」
ある日いつものように皆が帰ってくるのを待っていたら、髪の長くて優しそうな、皆が松陽先生って呼ぶ人が、
声をかけてくれた。
「いつも銀時達が言っているのだよ。も来たらいいのに、って」
「…あ、えっと…」
「も来たらどうだい?」
「!…ありがとうございます、でもお母さんとお父さんが…」
「…そうか。では私から話しておくよ」
「で、でも!」
「若いうちは何事も挑戦だ。やりたい事を無理に遠慮しすぎることは無いよ。 男の子も女の子も関係ない」
そう言って頭を撫でてくれたんだ。
あたしの、大好きな先生。
「先生、あたしね、皆を守る剣を持ちたいの」
「そうか。らしいね」
「銀ちゃんもヅラも、晋ちゃんも辰っちゃんも、皆強いけど、自分のこと心配しないで突っ込んでくから、
だからあたしはそんな皆を守れるようになりたい」
照れ臭い事言ってるかもしれないけど、本心からそう思うんだよ、先生。
「は優しいね、」
そう言ってまた、あたしの頭を撫でてくれる。
先生にそうしてもらうと、すごくすごく、安心する。
「でね、先生」
「何だい?」
「あたし絶対もっともっと強くなって、大好きな皆と先生の事、守るから」
そう言ったら先生は「ありがとう」といってまたあたしの頭を撫でてくれた。
先生にそうしてもらうと、すごくすごく、安心するんだけど、たまに、何故か泣きたくなるんだよ。
すごく。
ありがとうありがとう先生。
あたしに一から全てを教えてくれた先生へ。
ありがとうございました。そして、ごめんなさい。
(あれだけ誓ったのに、結局一番守らなきゃいけなかった先生を、あたしは守れませんでした)