「土方はんの指って、えらい色っぽいわぁ」
「…変態くさいぞ、お前」
「いややわぁ、照れてはるん?」
薄暗い部屋の真ん中に敷かれた布団で寝転ぶ、2人を照らす光は2つ。
そしてそれはどちらも小さい。
1つは枕元で妖しく赤い光を放つ照明。もう1つは土方が吸っている煙草のオレンジ色のー。
「…てかお前その下手な京弁止めろ」
「えぇ?」
「少なくとも、俺が相手の時くらいフツーに話せ」
調子狂うんだよ、と煙を吐き出せば遊女ーはクスリと笑う。
「あはは、…私もタバコ貰っていい?」
「おー」
そう言っては煙草の箱を取ると、1本出して「それじゃぁ失礼」と言い、口にくわえると、同じく煙草をくわえていた土方に近付いた。
「…ふぅ」
土方から火を貰うとはうつ伏せになり枕をぎゅっと抱える。
「…そういえば、」
「あ?」
「土方さんは何で私に会いに来てくれるの?」
「…」
目だけ動かしてを見た土方は、視線を元に戻すとさァな、と答えた。
「私キレイな女じゃないよ?心も、身体も、」
「…」
「…汚い指」
そう言って自分の手を照明に笠指たに、今度は土方が口を開いた。
「…じゃァ何でお前は俺に抱かれんだ?」
「…それは、」
「俺だって汚れてるだろ。手なんて人の返り血で真っ赤だよ、」
「…」
そう言って目を瞑る。
なぜ会いに行くか。
なぜ抱かれるか。
少なくとも、「好きだから」という答えは言ってはいけない。
お互いに。
だっておかしいじゃないか。
にとって土方は只の客の1人にすぎなくて、土方にとっては少し気に入った遊女にすぎなくてー。
…いや、そうでなければいけない。
この関係を、壊してはいけない。
「…土方さん」
は身を起こすと土方側にあった灰皿に手を伸ばす。
それに煙草を押し付けると、土方の口から煙草を奪った。
そうしてその唇に軽く口付けてから、言う。
「…指切りでもしませんか?」
「…何を約束すんだ?」
そう訪ねると、さァと言って首を傾げてみせる。
「特に何ってワケじゃありません。ただ、…そうですね、お互いこれからも誇り持って、生きていく、って誓うのはどうですか?」
土方は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに笑うと右手を差し出す。
「そういう事なら構わねェ」
「ふふ、約束ですよ」
「あぁ、」
「破ったら針千本飲ませますよ」
「…怖ェな」
汚れた指で、指切り。
((誇り持って、生きて、自分より先に死にませんように))