「…晋助って、妙な色気あるわよね」
「…はァ?」
私がそう呟くと、晋助は吸っていたキセルを口から離して、こちらに振り向いた。
その顔にはおもいっきり「何言ってんだコイツ、」と書かれている。
まぁ私も男に向かって言うことじゃ無いかな、とは思ったけれど、風呂上がりに適当に着物を羽織ってキセルを吸う彼が月明かりに照らされている光景に出くわした時、素直にそう思って、馬鹿正直に言葉に出してしまったのだ。
「…」
「いや何かさ…なんとなくそう思っただけよ」
あんまりこちらを睨んでくるものだから私は心の中で失敗したかな、と呟きながら適当に誤魔化す事にした。
それほど深い意味は無かったのよ、という意味で。
運んできた晩酌を畳に置き、晋助の横に座った。
…ちょ、まだ見てくるんですけどこの人。
「…俺ァ、の方がよっぽど色気あると思うがな」
「…は?」
す、と首筋に晋助の手が伸びてきて後ろ髪をすくわれる。
それが少しくすぐったくて肩が震えた。
「…うなじとか、白いしなァ」
「…絞めたら綺麗に跡が付きそう?」
「…」
私が先に言った事はどうやら図星だった様で晋助は少し驚いた様な顔をしたけど、すぐにニヤ、って笑ったかと思うと首筋に顔を埋めてきた。
「…ちょ、」
「よく分かってんじゃねェか、」
ちく、と僅かな痛みが走って、晋助が白いと言った私のそこに、紅い花が咲いた。
(まだお前が必要だから、)