「ねぇトシの瞳って、どーなってんの?」

「…は?」

あたしはトシに出会ってからずっと気になっていたことを聞いてみた。

…別に今じゃなくても良い事だけど。なんとなく聞いてみた。

 

「だってずーっと瞳孔開いたまんまじゃない。普通の人間に出来ることなの?」

「…テメェ、それは遠回しに俺が普通の人間じゃねぇつってんのか?」

「いや遠回しとかじゃなくて率直に言ったんだけど」

 

 

あ、怒った。

上等だァァァァ!!表へ出ろォォォ!!とか叫んで剣を抜くトシをひょいとかわして庭へと逃げる。

…怒っても笑っても瞳孔開いたまんまだよね。

でも、…好きなんだよなぁ。

あたしみたいに真っ黒じゃなくて、透き通っててビー玉みたいなトシの瞳。

 

 

何か追い掛けられるのもあたしにとっては平和の象徴みたいなモノで、これが結構嬉しかったりする。

…いやいや言っとくけどあたしMじゃないからね?

そんな事を思っていたら急に顔が見たくなって走っている足を止めて振り向き、

向かってくるトシに真っ正面から抱きついた。

 

「うぉ!?」

 

以外と勢いがあったみたいで地面に二人で倒れ込む。

…はたからみれば、あたしがトシを押し倒してるみたいだ。

 

「ばっ!!!コラ離れろ!!」

「やーだー」

これまでもかと言うほど抱きついてみる。

…照れちゃってかわいいなぁ。…総悟はキモイって言いそうだけど。

 

あたしに引く気が無いのが分かると大人しくされるがままになっている。

「…けど、好きだよ」

「…なっ!」

「瞳孔開いた瞳もトシも」

「…一言よけーなんだよ」

「えへへ」

「…おい「何してんでィこの真っ昼間から」

 

…あ、S王子、君臨。

何処から現れたのか、いつの間にか総悟があたし達を見下ろしていて。

 

 

 

 

 

「…皆ァァァァァ!真っ昼間から土方のヤローが仕事もしないでとイチャついてるぜィイイ!!」

「総悟ォォォォォ!!スピーカーは止めろ!!てか止めて下さい頼むから!!もいつまでも乗っかってんじゃねェェェ!」

「うわぁ八つ当たりだぁ。さっきまではあんなに可愛かったのに」

「マジですかィ?キモイの間違いだろィ」

「テメェらもう戻れェェェ!」

 

 

わートシが怒ったぁと叫びながらまた鬼ごっこ再開で。

 

 

「それにしても土方さん、好きな女に抱きつかれて押し倒されて何もしないなんて、ひょっとして年ですかィ?」

「ばっ!違「……皆ァァァァ!!大変よォォ!トシが…トシがとうとう不能にィィィ!」

「テメェスピーカーは止めろつってんだろォォォ!!何なんだよおめーらサディスティック星から来た王子と姫だよ!!」

 

追い掛けられながら総悟と二人で顔を見合わせスピーカーに向かって叫んだ。

「「キモイーキモイよ土方ァァ!隠れMだってよォォ!!」」

「待ちやがれェェ!!」

こんな追い掛けっこもあたし達にとっては平和の象徴で。

 

あたしは今日も、幸せです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(どうかあなたのその瞳に、いつまでも映っていられますように)