「ね、高杉ピアス開けてくれない?」

ある夜そう言って針と、どこから手に入れたのか3つのピアスを持ったが俺のところへ来た。

 

 

「…は?何で俺が…つーかどうしたんだよ、ソレ」

右手にあるピアスを指差して尋ねると、ああ、と言いながら俺の隣まで来てストンと座った。

「…家族の形見なの。お母さんとお父さんと、兄貴の。あたしだけ穴開いてなかったから、今までつけらんなくてさ。

で、明日からまた戦争長続きしそうだからお守りにしたいなぁと」

 

 

ああそういやコイツの家族が死んでどれくらいたったっけか?などとぼんやり思った。

俺とか銀時、ヅラや辰馬の親も随分前だった気がする。

 

そもそもここに集まってるヤツの中に家族全員無事ですみたいなのは、ひとりもいない。

 

 

 

「…で?何で俺なんだ」

「…だって辰っちゃんは笑いながら変なトコ刺しそうだしヅラは真面目すぎなバカだから震えて出来なさそうなんだもん」

 

「…銀時は?」

「頼んだら、無理無理、見てるこっちが痛いから、って言われた」

 

どの場面も安易に想像できて笑いを堪える。

「っちょ、笑わないでよ!!」

…駄目だやっぱ顔に出てたか。

 

 

「あーもう自分で開けるからいい!」

そう言って立ち上がるの腕を掴んだ。

まだ、笑いは止まらなかったが。

「…貸せ、開けてやるよ」

.はまだ怒っている様で、ちょっとすねたような顔をしたまま大人しく座り直した。

 

 

 

 

 

「ホントにこんなんで開けていいのかよ」

「…だって他に無いじゃない、適しているモノ」

.から受け取った針は普通の縫い物とかで使うようなモノで、

仮にも女なんだからもうちょっと考えたらどうかと思う。

 

だからといって他に何も無いけれど。

「左耳に2つね」

「おう」

そう言って1つ目の穴を作るべく、一気に針を突き刺した。

「いっ…痛!!ちょっとヤルとき言ってよ!!」

涙目で睨まれる。

 

「教えた方が痛ぇだろ」

言いながら針を抜き、ピアスをねじ込んだ。

「っちょ!そうだけど…って血!血垂れてない!?」

自分から頼んでおいて、やっぱ怖いんじゃねぇか。

「あーうるせぇ。ちょっと黙れよ」

「っン!?」

血が流れている左耳を舐めながら、右耳に穴を開けた。

「なっ!?」

「安心しろ、位置は狂っちゃいねぇよ」

「そ、そうじゃなくて…」

「あ?痛くなかっただろうが」

「え…あ、」

 

 

2つ目のピアスもつけ終り、残りは1つ。

最後の穴は、痛みに耐えるようにきつく結ばれたソレに、口付けながら。

 

 

「…ほら、終ったぞ」

「あ、ありがと」

しばらく沈黙が続いた。

明日からはお互い忙しくて、きっともうこんな風に過ごせることは無いだろう。

最悪、死ぬかもしれない。

…何らしく無ぇ事考えているんだ、俺は、死なねぇ。

 

 

 

ならば。

真っ赤になったままうつ向いているの左耳にもう一度顔を近付け、ピアスを舐めて囁いた。

「          」

 

 

 

 

 

 

 

 


「あー今日もいい天気ー」

伸びをしながら呟いた。

 

 

久しぶりに、昔の夢を見た。皆で笑ってバカやって、松陽先生に怒られる夢。

…先生は優しいから、本気で怒ったりしなかったけど。

 

 

 

 

 

…高杉、あたしが真選組に入ったなんて知ったら、どう思うかな。

殺されちゃうかな、やっぱ。

立場上、…もう敵同士だし。

 

 

あの時から一度も外していないピアスに触れながらそんな事を思った。

「さて、皆起こしに行きますか」

 

きっと同じこの空の下の何処かで生きている彼に一言、ごめんねと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(「
…おまえも死ぬな」ね?あの時あなたに言われた通り、約束ちゃんと守ってるよ)