「寒ッ…あ!」
並盛中に通うも、ばっちり両方とも装備して登校しているが、冬に弱い彼女にとってはそれでも寒いらしい。
もっとも、まだ冬は始まったばかりなのだけれど。
目を細めて向かい風に耐えていたが、ある人物を見付けると嬉しそうに駆け寄った。
「おはよ!雲雀さん!」
「…おはよう」
彼女が声を掛けたのは知る人ぞ知る泣く子もついでに泣いていない子も黙る並盛最強の風紀委員長、雲雀恭弥である。
が、だけはそんな事は気にしていないようで気軽に声をかけたりしている。
本人曰く「え?雲雀さん?全然怖くないよだって優しいもん!」との事。
一方雲雀の方も人と群れる事は何より嫌いだが、だけは別な様で素直に挨拶を返している。
多分それには理由が二つあって、一つ目は彼女が強いから。
別にには普通に友達も沢山居るし中学生にしてマフィアとかそんな特別な事も無いけれど、他人に頼りっぱなしといった事は無いし
おとなしそうに見えて自分の信念?みたいな物はしっかり持っているという、そーゆー強さが有るからだろう。
そして二つ目は、が雲雀の彼女だから。
恋人を愛しく思うのはあたりまえで、だから無視なんてありえない事なのだ。
ちなみに、後者の事実は殆どの生徒、もちろん教師も知らないけれど。
「寒いねー今日も仕事あるの?雲雀さん」
「(いい加減せめて"さん付け"止めてくれないかな…)うん、有るよ」
「わかった!じゃぁ終わる頃に応接室行くね」
「…それまでどうするの」
「うーん…図書室で勉強してようかな」
が雲雀に"さん付け"するのに特に理由は無い。
周りがそう呼ぶので慣れてしまったのだがにとってはもう"さん"もあだ名の一部みたいな感覚で。
雲雀にしてみればもう付き合って大分経つのだからそろそろ止めて欲しいとか少しだけ思っていたりするのだが
が側に居るなら別に呼び方なんてどうでもいいのだ。
二人で廊下を歩いていたが分かれ道まで来ると、だから大丈夫!と言ってこれからそのまま応接室へと向かう雲雀に手を振って
は自分の教室へと入った。
が仕事が有る時に応接室に来ないのはもちろん雲雀に気を使っているからだ。
誰よりも並盛を大切にしている(と言うと本人は怒るけど…照れ隠し?)雲雀の邪魔をしたくない、けど出来るだけ一緒に居たい、という訳で
帰りは一緒にというのがの考えだ。
応接室の方が暖房器具も充実してるし雲雀本人はなら別に邪魔になんてならないと思っているのだけれど。
***
「さて、勉強でもしますか」
授業も全て終わり、部活が有る生徒は部室へ、無い生徒は家へと向かう頃、は友達とまた明日などと挨拶を交しながら一人図書室へと向かった。
もついこの間まではテニス部の一員だったが、中3ともなれば引退と言うモノがあり、今の時期は放課後特にする事も無いのだ。
…勉強ぐらいしか。
とはいえ彼女は勉強も出来るので特別焦ったりはしていないがやはり受験生という事でそのへんはちゃんとしている。
しかも放課後の図書室というのはあまり人も来ない為、落ち着いて取り組めるのだ。
それに帰ってから勉強するより学校で終わらせて家ではのんびりした方が効率が良い。
だからは雲雀を待つ時間を少しもつまらないと思った事は無かった。
二人が出会ったのは中1の秋。
町で子供がカツアゲされているのを見ていられなかったが助けたのだが相手は並盛高の不良達。
助けに入ったはいいものの、逆に絡まれさてどうしようかと少し焦っていたところを、雲雀が助けたのだ。
雲雀は群れているのが気にくわないとかそういういつもと同じ理由でトンファーをふるったのだが、
たった一人で高校生に立ち向かったに興味を持ったのがきっかけで、二人は会えば二言三言会話を交すようになった。
最初なんてほとんどから声をかけていたようなものだし、は敬語は使わなかったものの今に比べればぎこちなかった。
何より周りが不思議がった。
おとなしめで、でも明るく友達の幅も広いと"あの"風紀委員長だから。
まぁ雲雀はその容姿のせいか、一部の女子から物凄い人気だったけれど。
「…!もうこんな時間かぁ」
セットしていたケータイのアラームが鳴り、応接室へと向かう為荷物を片付け始める。
「それにしても今日はホント寒いなー」
独り言を呟いてふと窓を見た。
「え?!雨!!」
すると今まで小雨らしかった雨が一気にザァァァと音を立てて降り始めた。
「どーしよう!傘!!」
そう、天気予報では降るなんて一言も言っていなかった。
おかげで傘を持って登校した生徒は一人も見ていないくらいだ。
(雲雀さんも持ってないだろーなぁ……あ!)
この寒い中濡れて帰ったら確実に風邪をひくだろう。は少し考えた末、かなり前にロッカーに折りたたみ傘を入れた事を思い出した。
いわゆる置き傘というヤツだ。
(良かった…今日はツイてるなぁ)
雲雀の所へ行く前に教室へ戻ろうと、電気を切って鍵を閉め図書室を出た。
「あれ?ツナ君!」
無事教室から傘をとり、応接室への廊下を歩いていると階段にツナこと沢田綱吉が座っていた。
「(げ!先輩に見られた…)こ、こんにちは」
「どうしたの裸で!また死ぬ気弾!?」
は大抵雲雀と一緒に居たのでツナやリボーンとも面識があった。
リボーンにいたっては後々をファミリーに入れるつもりらしい。
だからマフィアの事や死ぬ気弾の事もリボーンから聞いていたのだ。
「ま、まぁそんなトコです…(恥ずかし…)」
「そっか…服は?」
「あ、今獄寺くんと山本が持ってきてくれるハズなんで…」
明らかに寒そうなのに大丈夫です、と苦笑いしているツナを放っておけずは首に巻いていたマフラーを外しツナへとかけた。
「え…?」
「あんま意味ないかもしれないけど、無いよりはマシかなと思って」
「で、でも!」
「いーよ明日にでも返してくれれば!」
「あ、ありがとうございます」
「じゃぁごめんね!雲雀さん待たせてるから!」
そう言って手を振りながら走り去ったを見送りツナは呟いた。
「やっぱ優しいなぁ先輩。…あれで雲雀さんと一緒に居るんだから、凄いよ」
「遅くなってごめんね!」
「別にいいよ、…息切らしてどうしたの?」
が応接室に着き、ノックしようとした時ちょうど中から帰り支度をすっかり済ませた雲雀がドアを開けた。
「うん。ちょっと遅くなっちゃったから」
「(それで走ってきてくれたんだ…)今、図書室迎えに行こうかと思ってたんだけど…」
言いながら歩き出す。
「えへへ。雲雀さん!」
「何?」
「傘、持ってる?」
「…ううん」
それを聞くとは嬉しそうに笑って後ろ手に隠し持っていたソレを出した。
「じゃーん!一緒に入って行こ!」
目の前に出されたピンクの三折り傘を見て雲雀は一瞬驚いた顔をしたが直ぐにちょっと笑ってありがとう、と言った。
昇降口で靴に履き替え傘をさす。
「うー寒いね!…?どうしたの?」
「ねぇ、マフラーしないの?」
先程会った時から寒がりながマフラーをつけていない事が気になったが、もしかしたら下でつけるのかもしれないと思って黙っていたのだ。
しかし予想は外れたようで、がそのまま外へ出ようとするので尋ねてみる。
「朝はしてたよね?」
「…あー、ちょっと、友達に貸しちゃって」
戸惑いながらもそう答えるとふぅんという返事が返えってきた。
(だってツナ君の方が寒そうだったし…雲雀さんが一緒にいるなら無くても大丈夫かなって思ったんだよ…なんて言えないけど)
事情を説明しても昇降口の入り口から動かない雲雀に再び声をかける。
「大丈夫だよ?帰ろ!」
「…うん。ちょっと待って」
言うと雲雀は自分の巻いていたマフラーを半分取るとを引き寄せその首に巻いた。
「え?ちょ…」
「これなら、僕もも寒くないよ。傘のお礼」
「…ありがとう」
雲雀は真っ赤になってうつ向いているの手から傘を抜き取り歩き出した。
「寒かったら言ってよ?」
「…うん」
(うわぁちょっと嬉しいけど恥ずかしい…!顔近い顔近い!てゆーかやっぱ少し寒い!…、でもなぁ…あ!)
「あ…小雨になってきたね」
「え?あ、本当だ」
言おうとした事を先に言われ少し驚く。
顔はうつ向いたままだったのでおそらく雲雀には見えていない。
(…よし!)
思いきって顔を上げ、自分の右側に居る雲雀を見上げた。
「…雲雀さん、も一つ言ってもいい?」
「うん?」
「…み、右手で傘持てます、か?」
今度はまた雲雀が驚く番で。
「出来るよ」
そう言って傘を持ち変え、空いた左手での右手に触れた。
「これで寒くない?」
「うん、…あっかい」
赤くなりながらも今度はちゃんと自分の顔をみて笑ったに雲雀も笑い返した。
「ねぇ、僕ももう一つお願いしてもいい?」
「?いいよ!あたしに出来ることなら何でも!」
にっこりわらう彼女の手を強く握りしめ彼は耳元で囁いた。
「下の名前で、呼んでくれない?」
「…いいよ」
そしたらはやっぱりもっと赤くなったけど笑って繋いでいた雲雀の手を強く握り返した。
二人揃えば幸せが
沢山集まってくるのです!
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5775を踏まれた鈴蘭様に捧げます!遅くなって本当にごめんなさい!…無駄に長くてごめんなさい。
意味不明でごめんなさい。。
それではありがとうございました!よろしければ今後もよろしくお願いします。(061121)