「恭弥って、メガネとかかけたりしないの?」

「…は?」

 

いつだったか、誰かが言っていた気がする。男の子はメガネをかけると三割増しかっこよくなる、と。もちろん恭弥は目が悪い訳ではないし、これ以上かっこよくなってしまったらそれはそれで困るのだけれど。

もう10年くらいの付き合いだけれど、恭弥がメガネかけてるところ等見たことがない。いや、さっきも言った通り彼はとても目が良いからそんな必要がないのは知っているし、分かっているのだけれど。でもこれだけ神経使って、デスクワークだってしているのに何故悪くならないんだろう。マフィアという職業上、夜仕事をすることも多いのに、彼の視力は相変わらず1.2のままだ。私なんてコンタクトしても1.0しかないのに。

 

「何、かけてほしいの?」

「え?…いやそういう訳じゃ…あるけど」

 

別に死んでも見たいとかそういう訳じゃないけど、暇な時ってどうでもいい事とか、どうしようもない事ばかりが頭の中をぐるぐる回ったりするから、これもその一種だと思う。…多分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めて聴いた時から耳から離れない銃声の音、叫び声、悲鳴、ひとだったかたまりがたおれるおと。血の水溜まりを、なるべく服にはねない様に歩いた。この臭いも、しっかり鼻が記憶している。

 

「…あ、」

 

 

 

 

 

 

合流場所への角を曲がると、既に恭弥はそこに居た。

 

「…お疲れ様」

「…お疲れ」

 

このやりとりも、慣れてしまった。けれど、繰り返す度に今日もお互い生きていたんだ、と安心出来る。強いと信じているから、一人に出来る。そんな私達をよくペアにするのはもちろん沢田さんだ。

 

 

 

 

 

「恭弥、目瞑って」

「は?」

「いいから早く!」

 

そうして、私が恭弥にかけたもの。…メガネ。

さっきの戦闘で綺麗にレンズが割れてしまって、使い物にならなくなったフレームだけの。もちろん、私のだ。たまたま、胸ポケットに入れたまま忘れて出てきてしまった、私の。

 

「…なにこれ」

「…うん、かっこいい」

「…」

 

私のフレームだけになった哀れな黒ぶちメガネは、やっぱり恭弥によく似合った。いや、彼は何でも似合うのだけれど。

 

「どう?これを機に伊達メガネとか」

「…邪魔だからいいよ」

「え?」

 

近付いてきたのがまだあまり見慣れていない顔だったから、反応が遅れて、ついでに何だかときめいてしまった。そんなことを思っているうちに、唇に心地好い熱が広がった。

 

 

 

 

 

 

明かりがかけた、魔法 

キスするのに邪魔でしょ?ね、?なんて君が笑うから 

 

 

 

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香織様に捧げる相互リンクお礼夢でした。

意味分かんない上に微妙に暗くてすみません;;香織様が仔ディノを下さったのでじゃあ私は大人雲雀で!と思ったら(何で)こんなことに;;こんなものでよければ貰ってやって下さい!

では、こんな秋山ですがこれからもよろしくお願いしますv

ローズドロップス/秋山美雨羅  (070527)