拍手お礼二代目 秋のリボーンSS 5種 「オータムティックにキスして」(2006.10.3〜12.9)

〈ヒバリ〉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「何それ?」
「え?ああ文化祭の企画書だよ」
あたしがそう答えるとふーん、と言ってまた机に向かってしまった。
「でもやりたくないんだよねー」
はぁ、と溜め息をつく。
もちろん文化祭自体は好きだし、クラスでわいわいするのも楽しいと思う。
そんなあたしが何故やりたくないなんて呟くかと言うと…企画そのものが嫌なんだ。
正確に言うと、メイド服着るのが嫌なんだ。
そう、今年うちのクラスはメイド喫茶。
ありきたりなんだけどまさか我が身にふりかかる日が来ようとは。
「へぇ、メイド喫茶なんてやるの」
いつの間にかヒバリがソファーまで来てあたしの隣に座り、
企画書を覗きこんでいた。
あたしがぼーっとしているのか、彼が気配を消しているのか。
毎度毎度の事だからもう驚かないけど。
「そー。皆大丈夫とか言うんだけど、こーゆーの似合わないからなぁ」
「…(自覚なし?)普通に似合うと思うけど」
「え?ホント!?」
まさかヒバリにそんな事言って貰えるなんて思わなかったから、
凄く嬉しくてがばッと顔をあげた。
「ヒバリがそう言ってくれるなら、ちゃんと出ようかな」
そう言って笑ったらヒバリはしばらく考え込んだかと思うと「やっぱ出ちゃダメ」と言った。
「え?」
そしたらその後ヒバリはあたしの頭を撫でていつもみたいにニッって笑ってキスをして、
こんな事を言ったんだ。
「君のご主人様は僕一人で十分だからね」
(オータムティックにキスして/それは無邪気で挑戦的な)


〈ディーノ〉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「っくしゅ!」
「風邪か?」
「うーん…そうかも」
最近寒かったり暑かったりしたからかなぁ。
健康面には気を付けてたつもりだったんだけど。
あ、そういえばちょっと寒気するかも…。
もう一回くしゃみをしたら「だ、大丈夫か?」って言われた。
大丈夫あたし?…多分。
あーあ。せっかくのディーノとのデートが…。
調子のってスカートにしたのが悪かったのかな…。
でもこれはきたかったんだよね。そんな事を考えていたら、急に右手に暖かい感触ー。
「っで、ディーノ!?」
「こーしてた方が暖かいだろ?」
あたしの手を握ったと思うとそのまま彼のコートのポケットに入れてしまった。
しかもちゃんと恋人繋ぎだ。
「後でちゃんと左手も暖っためてやるから。な?」
もうすぐ目的のビルに着くから、と付け加えて。
「…ありがと」
「おー。っと、その前に」
「?」
何だろうと思ってディーノの方を向いたらすっ、とディーノの顔が近付いたかと思うと
あたしの唇に軽く触れて離れた。
「唇も寒そうだったから」
「って!風邪うつるよ!?」
「大丈夫大丈夫、それにお前の風邪なら大歓迎」
…どうしてそう恥ずかしい事さらっと言えるかな。
「それに」
「ん?」
「俺が風邪ひいたら看病してくれるだろ?」
そう言って笑ったディーノの顔が、西日に当たって凄くキレイに見えた。
(オータムティックにキスして/それはキラキラ輝くロマンティックな)


〈ベルフェゴール〉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ベルってさぁ、秋っぽいよね?」
「そー?」
「うん。ジャックザランタンとか似合いそー」
「…」
何か、似合いそうなんだよね。
ベル、っていったら春みたいに優しくないし夏みたいに爽やかじゃないし。
けど冬みたく冷たくもない。だから秋みたいだなと思う。
イメージカラーは黄色、オレンジ、黒、茶色。
イメージワードはちょっと妖しい。…うん、妖しい。
「って言うか、いい加減離して下さい」
「やだ。だってアンタ湯たんぽみたいで気持ちーんだもん」
「…子供体温で悪かったわね」
そう、先程からずっと、あたしはベルに後ろから抱き抱えられたままなのです。
いや、嬉しーんだけど。ちょっと緊張してるわけですよ。
その時デジタル時計がピツ!っと鳴り、時刻が明日になったのを知らせた。
「あ、ほらもう明日だよ?寝たいんだけど…」
てか何?あたしはどんだけ抱きつかれてたんですか!?
「ね、今日何の日か分かってんの?」
「へ?」
そういや最近徹夜とかで生活メチャクチャだったからか、
聞かれると今日どころかさっきまで何日だったのかすら分かっていなかった。
「え、と「っー事で、Trick or treat!」
一瞬ぼーぜんとしたものの、ハッと我に返った時にはもう遅くて。
視界には笑ってるベルの顔と天井しか映らない。
「どーせお菓子持って無いでしょ?て事でイタズラ決定」
あーくそ、やられた。もうちょっと早く気付いてれば、何か用意出来たのに。
そんな事を思いながら、まぁベルならいいかと思う自分もいて
ちょっと笑ってベルのキスを受け入れてみた。
(オータムティックにキスして/それは息も出来ないくらい激しくて官能的な)


〈バジル〉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そらはすごくすごくあおくて、
かぜはとてもとてもやさしくて、
いまあたしたちがすわっているじめんはほんとうにほんとうにあたたかい。
元々そんなに人の来る丘じゃ無いんだけど見渡す景色は最高。
それが今あたしとバジルが居る所。
だけどどことなくさみしくて、まるでせかいにふたりきりになったみたい。
だけどいいよ。
となりにあなたがいてくれるならほかになにもいらない。
そんな風に想わせる秋は何て怖いのでしょう。
いつかはきっとわかれのときがきて、
そしたらあたしはあなたなしでいきていけるのかなんて。
そんな事を考えさせる秋はなんて恐ろしいのでしょう。
変わりゆく思考、思い、想い。
せんちめんたるどらまてぃっく。
秋は好きでもないし嫌いでもない。…嫌いでもない?本当に?
「…秋という物はいけませんね」
「え?」
「考えなくても良い事を、考えさせます」
何だ、あたしだけじゃなかったんだ。
「そうだね…「だけどそんな時、お主が隣に居てくれたら怖くない、です」
「…あたしも」
バジルが側に居てくれれば、怖くない。
ふと大分前に読んだ甘くて切なくて悲しい、恋愛小説を思い出してこんな事を言ってみた。
「バジルくん」
「何ですか?」
「…キスでもしませんか?」
さぁくだらないふあんなんてどこかとおくへいってしまえ
(オータムティックにキスして/それは優しくて安心出来る)


〈骸〉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「…ねぇ、骸」
「何ですか?」
「ちょ、痛いんだけど」
今の状況を説明します。
あたしは骸に抱きしめられています。
そして場所はベ…ベッドの上です。
ちなみにあたしが上です。
幸せだけど、苦しいんです。
そうして先ほどからずっと、えろいことをするでもなくただただ時間が過ぎていくのです。
「…嫌ですか?」
「そんなこと無いけど」
あたしと違って骸の体は、冷たい。
気づいたら骸は消えてしまって、あたしだけが取り残される。
そんな気がして不安になった。
骸ってほんとうに霧みたいなヤツだから。
彼はあたしに触れられても、あたしは彼に手が届かない。
「……ねぇ、骸」
「何ですか?」
もっともっとつよくだいて、ちゃんと証明して。
あたし達は確かにここに一緒に居るんだって、生きてるんだって。
あなたのその冷たさがあたしのカラダに移るくらい、愛して。
「…何処にも行かないで」
「…当たり前じゃないですか。君を置いて行ったりなんてしませんよ」
…ありがとう。でもごめんね。あたしバカだから、それだけじゃまだ、
足りないんだ。
「…骸」
「はい?」
「むくろが、ほしい」
「…今日は随分積極的ですね」
さぁ、いつもみたいになにもかんがえられなくなるくらいの、あまいあまいきすをして
(オータムティックにキスして/それは幻想的で現実的な)

 

 

センス無いですね・・・でも思ったより沢山の方に見て頂いた様で嬉しかったです!!ありがとうございました!