「お、やっぱりココに居たのか」
「…うん」
銀時の考えている事はよく分からない。
いや、もしかしたら何も考えていないのかもしれない。
そして私も私が分からない。
どうしたいのか、分からない。
正直私は多分銀時が好きなんだと思う。
戦の真っ只中で何を、と思うかもしれないけど。
銀時が笑ってくれると私も嬉しくなったし、血だらけで帰ってきた時は心臓が止まるかと思った。
何より護りたいと思った。
死んでほしくないと思った。
それは銀時が私より強いから大丈夫とか、だから私は銀時に護られはしても逆は無いとかそういう事は一切関係無くて、
ただ一日が終わった時に、生きてる彼に会えれば良かった。
もちろん仲間は皆死んでほしくない。
けど、銀時への想いが他の人とは少し異なる事くらいは、私も気付いていた。
だから多分、いや私は銀時が好きだ。
だから分からない。
どうすればいいのか。
「…いよいよ明日だね」
「おー」
暫く二人して屋根に座って星を眺めていたけど、沈黙が苦しくて声をかけた。
いつもはこんなんじゃ無いのに。
銀時と二人きりの時の沈黙など、"安心して、心地好い"以外の何物でも無かったのに。
それはやはり、明日がおそらくこの戦の最終日だからだ。
だから私は明日までの間に何をどうすればいいのか分からなかったのだ。
…なのに何だ、その気の抜けた様な返事。
こっちはあんたに気持ち伝えるかどうするかで悩みまくっているのに、当の本人はいつもとまるで変わらない。
…まぁ銀時らしいといえば、らしいか。
でも、ねぇ、私達もしかしたら明日でもう一生会えなくなっちゃうかもしれないんだよ。
銀時に限って、とは思うけど私だって人間だ。
明日死なないなんて、保証、何処にも無い。
それにあんただって人間でしょうが、銀時。
この気持ちを伝えたら、明日生き残れるだろうか。
伝えなかったら明日死ぬだろうか。
はたまた全く逆のパターンか。
もし明日の夜が明けた時、二人生きて会えなかったら、伝えた事を後悔するだろうか?
伝えなかった事を後悔するだろうか?
それ以前に伝えて良いものなのだろうか。
迷惑じゃ、無いだろうか。
ねぇだからいろんなコトでぐちゃぐちゃな頭を冷やそうとわざわざ一人になりにココに来たのに、
何であんたは何くわぬ顔で、また私を見付けて、近付いてくるの?
私の領域に、いとも簡単に入ってくるの?
いつだってそうだ。
銀時は私が落ち込んで居る時も、自分の無力さにイラついている時も
スル、とまるでそのへんの襖を開けるみたいに私のココロに手をかけて、
空気交換するみたいにスーっと胸の奥で渦巻いてる黒いものを溶かしていくんだ。
そしてまたいつも通りの"仲間"に戻る。
また、それの繰り返し。
「明日…」
「…ん?」
「明日は、きっと大丈夫だ」
泣きそうに、なった。
ねぇ銀時今何考えて言った?
何で?
何が大丈夫?
ねぇ私、私は――― あんたが、好きなのに。
もういいや、もういいよ。
偽善者ぶるの止めろ自分。
もうそうだよ、コレは銀時の迷惑になるとかそういうのは関係無いんだ、私が怖いだけなんだ。
伝えて拒絶されたらどうする?
明日生き抜く理由がなくならないか?
違う、違う。
この戦はそんな軽いキモチで参加したんじゃないんだ
男にフラれたくらいでくたばるなんて駄目なんだ許されない。
じゃぁ私は何が怖い?
どれが本音?
もう、嫌だ何も分からないんだ。
助けて欲しい?
何から?
「」
「なに、」
涙が溢れかけていた目を擦って左を向いたら、いつになく真剣な表情をした銀時の顔が思ったより近かった。
「、…好きだ」
「!」
唇に、暖かいモノが触れた。
何が?
何で何で何で、なんで。
「…っ!」
「うぉ!」
とっさに出た手を頬を叩かれる前に銀時が掴んだ。
ねぇ私今嬉しかった?
聞いて安心した?
後悔した?
…聞かなきゃ、良かった?
「オイ、何す…」
「何でっ!」
「!」
こんなに好きなのに
「…何で、そんな簡単に言うのよ!」
どれほど好きか、知らないくせに
「わ、たしはっ!…私が!どれだけ悩んで…、っ、好き、なのにっ!」
「………」
言われた瞬間、思った。
ああ私、明日―
「ねぇ、…明日、もう会えなくなっちゃ「…は、死なねェ」
「!」
銀時の考えている事はよく分からない。
いや、もしかしたら何も考えていないのかもしれない。
「…何よ、それ、」
優しそうな笑顔が一瞬、涙の間から見えて、その後は見慣れた白い服だけが、私の視界を支配した。
「おー、どーだ落ち着いたか」
鼻水つけんなよ、と言いながら私の背中をぽんぽん、と叩く。
付けないわよ、と呟きつつ「うん」と答えた。
静かな夜だった。
聞こえるのは、何処か遠くで鳴いている虫の声と、すぐ耳元にある銀時の心臓の音だけ。
「俺もよー考えたんだって一応」
「…一応なの」
嘘みたいだ。
さっきまであんなに苦しかったのに、今はもう平気だ。
会話も、いつも通りに出来てる(気がする)。
明日、私と銀時は別行動だ。
場所も、離れている。
元々ヅラ達は私達を組ませようとしていたらしいけど、私が頼んで別にしてもらった。
だって私の目の前で銀時が死んだら?
私をかばったりとか、足手まといになったら?
考え出したら、怖かったから。
だから明日は銀時とヅラがペア、晋助と私がペア。
「で、色々考えた結果、俺は言おうと決めたワケよ」
「…ふーん」
「って反応薄ッ!!…まぁいい、俺の考えはこうだ 例えば明日、が死ぬかも、と思うとするだろ」
「…瀕死決定なの!?」
「だから例えだつってんだろ!!最後まで聞けェェ!!」
「…はい」
至近距離で怒鳴られて思わず耳を塞いだ。
まだ、お互いの顔は見えない。
「でだ、そしたらお前、俺の事思い出すだろ?昨日余計な事言いやがって、って」
「うん」
「(即答ゥゥゥ!?)…そしたら、お前は最後まで俺の事考えて死ぬ」
…はい?
「…ふざけんなァァァァ!!」
思わず顔をあげると丁度ソレが銀時の顎にヒットして「うぐォォ!」と悲鳴?をあげた。
「何よそれ!!それ得すんの銀時だけじゃない!私はどーなんだァァ!!」
「と、思うからは絶対死なねェ」
「…は?」
いでで、と顎を摩りながら銀時は言った。
そしたら絶対俺の事一発殴らなきゃ気がすまないから、は生きて戻ってくるから、という事だそうだ。
…何だそりゃ。
私は相変わらず銀時の考えている事はよく分からない。
けど、どうやら何かしら考えてはいるらしい。
そしてそれはいつだって私を助けてくれる。
笑顔にさせてくれる。
って、それだけは分かったよ。
「銀時」
「んー?」
顔をあげて、今度は私から銀時の背に手を回してみる。
「明後日、殴らないけど帰ってくるよ」
「…おー俺も、にキスしてもらいに帰ってくるわ」
「…そこまで言ってないんですけど」
だから明日はきっと、いや絶対、大丈夫だ。
最後のキスで、
すべてが始まる
そしたらまた二人で星を見よう
END・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
前々から書きたかった戦争最終日のお話です。
正直サイト作る前からのネタ(遅っ)です。
やっと書けたので嬉しい。 (070224)