車に乗り込みながら御子柴が問う。
特刑五人の他に、五十嵐を含めいつもの三人、計八人で向かう。
「最後にヤツらが目撃されたのは第三セクターにある廃ビルだ」
「廃ビル…?」
車が発進すると、ボードに写真を張りながら五十嵐が説明を続けた。
三ヶ月前、土井夫妻は遺産欲しさに親族を事故に見せかけて次々と殺害、
二ヶ月前に死刑が確定して第三十四部隊が担当していたが失敗している。
そして梨川は二ヶ月前に無差別に放火殺人を繰り返し一ヶ月前に死刑確定。
これは第四十二部隊が担当していたが失敗。
そして第五の担当になったのだが、任務に向かう前に両者が手を組んだ「第三セクター連続放火殺人」が起こったのだ。
その事件は、ほんの三日前。
先程説明した通り、豪邸ばかり狙ったモノで二日で被害は五件に上っている。
ちなみに、この事はまだ一般放送では流されていない。
捕まえ損ねた死刑囚が罪を重ねたなんて知れたら、特刑の印象を更に悪くする。
もっとも、そういうのも含めて色々決めているのは三上や法務大臣だけれど。
「…成程な。確に裏がありそうだ」
それも、感が正しければかなり危険な。
「その、第三十四部隊と第四十二部隊は、何故失敗したんですか?」
御子柴の呟きの後が疑問を問う。
特刑は全部で四十七部隊。
彼等に回ったということはそんなに複雑な事件ではなかったはずだし、彼等も特刑。
失敗なんてそうそう無いはずだ。しかも二件も。
「情報も揃っていたし、簡単な任務だったはずなんだが、いざ任務に向かうと死刑囚が見付からなくてな」
「…見付からない…?」
「まるで消えたかのように痕跡ひとつ残らず、情報もまったく役にたたなかった」
任務へ向かう時に特刑隊員にとって欠かせない情報は、柏原ら諜報科が集めた信用できる正確なものだ。
それが全く通用しない…?何故。
「誰かが裏で糸を引いてる…?」
「その可能性もありますね」
式部、橋永が呟く。
今回の両者は、今までの経歴を見ても、接触する機会を持ち合わせていない。
なのにそれぞれ犯罪を犯し、死刑が確定すると忽然と姿を消し、手を組んで再び犯罪を犯した。
特刑のターゲットとなれば身を隠すか逃げるのが普通で、わざわざリスクを冒してまで再犯する必要はないだろう。
それに、「第三セクター連続放火殺人」。
死刑になってなお、金を盗む理由が分からない。
「盗んだ金を渡す代わりに匿ってもらってる…?」
「…いや、むしろ逆だな。匿う代わりに再犯を強いたんだろ」
式部と御子柴が少し確信めいたように言った。
もしその通りなら、彼等を匿い再犯を促したのは誰なのか。
いや、もしかしたら個人ではなく組織かもしれない。
それも大きな。
そう考えると第一が呼ばれたのも納得がいく。
「そろそろ着く。とりあえず現場から調べるのが妥当だな」
五十嵐の言葉と共に車は加速度を増した。
NEXT・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
事件の設定が…。
というか春日君がしゃべってないですね。…一応理由が有るんですが。
次くらいにはしゃべらせたいと思います。 (070117)