「はぁ…」

「また溜め息かよ、ボス」

「だってよー」

俺は今その…アレだ、こ、恋…をしています。…しかも人生初の一目惚れ。それが最近俺が溜め息つきっぱなしの理由だ。どうしていいか分からないし部下には呆れられるし。テメーら笑ってるけどよ、まぁこれで俺が普通の男だったら今俺達の居るカフェや店やらが並ぶ街を毎週日曜日に市場で買い物をするために通る可愛い可愛い彼女に声をかける事も出来るだろうが、俺にはキャバッローネ10代目ボスという一般市民から見ればとんでもない立場にいるんだから面倒で困る。近付いてくる女はまず信用出来ないし、あの子だってもしかしたら(いやあんな綺麗な瞳してるしそんなこと無い)(と信じたい)マフィアで敵かもしれない。また彼女が普通の人だとして…想いを伝えても相手が俺みたいなマフィア、しかもボスともなれば命を狙われるだろう。だからといって家に閉じ込めるなんて事も出来ない。恋愛も自由に出来ないならこんな地位なんていらないとたまに思ったりもする。けど、俺だって誇り持ってボスやってんだ。いつかそんな俺を分かってくれる(金や地位目的でなくボスとか関係なく俺自身を見てくれる)女の人に出会えたらいいと思ったりもしたけど、人生そう上手くいかないものだ。(ってかカナリ乙女思考だ…よな?…はぁ)

今だってスーツ着てるヤツに囲まれてエスプレッソ飲んでるだけでチラチラ周りから見られるし何かよく考えてみたら待ち構えつーかストーカーっぽいよな?コレ。彼女がココを通るのなんてほんの20秒くらいなのにそれが分かってから毎週毎週ココへ通っているんだから。(もう止めようか。どうせ声をかけるわけでも無いし)そんな事を考えていたら隣にいたロマーリオが肘で俺をこづいた。顎で示された方を見ると…彼女が居て。セミロングの髪をなびかせてパンやら缶詰、トマトやパスタといった実にイタリアらしい食材を両手いっぱいに抱えて歩いている。

(やっぱ可愛い…)

容姿も素が良いのだろう、控え目なメイクでも十分綺麗で短いスカートも変にやらしい事無くなく似合っている。そんな彼女を狙っているのは俺だけでは無くいようで…今も荷物を持ちましょうか?なんてありきたりなセリフを吐いて近付いている男がいる。…いつも彼女は断っているけれど。けどやっぱり声をかける男達を少し(つーかカナリ)うやらましく思ったりもする訳で。彼(女)らと俺の間には目には見えない境界線みたいな物が存在するのではないか。

 

 

 

いつまでも見ているだけなんて余計辛くなるだけだ、今日で最後にしよう、と思い席を立つ。

「?ボス?」

「もー止めだ。帰る…!!」

顔をあげたら丁度カフェの前を通った彼女と…

あろう事か目が合ってしまった。

 

 

 

 

それだけでも心臓が止まりそうだったのに。

(嘘…だろ…)

目が合ったと思ったらにっこり微笑んだのだ。この俺に。

(ヤバ…)

彼女はそのまま通りすぎてしまったけど、いっきに顔が熱くなっていくのが分かった。

いつも他の男には苦笑いで荷物持ちを断っている彼女が、本当ににっこり笑いかけてくれたのだ。この、俺に。 

(期待しちゃ、ダメ、だ)

 

 

 

 

 

***

(期待するのは止めようと思っただろ!何してんだよ俺!)

先週もう彼女を見にくるのは止めようと思ったハズなのに。

期待はしないと決めたのに。

もしかしたらまたあの笑顔が見れるんじゃないかとか、きっと心の何処かで思ってたんだよな、俺。

また懲りずにいつもの席に座ってエスプレッソ頼んで部下を二人ほど連れて。

世界の何処を探してもこんなボスは居ないと思う。呆れながらも毎回付き合ってくれてたコイツらにも感謝だな。

 

 

 

 

 

 

 

…でも今日で本当に終わりだ。

 

 

 

 

 

「帰るぞ、悪かったな、いつもいつも」

「ボス…」

今日、いつも11時にここを通る彼女は来なかった。

ちなみに今は12時。もう無理だな。

 

 

 

「んな顔すんなって!それに急がねーとリボーンが13時には来ちまうしな!」

俺より部下の方が辛そうな顔をしていて。オメーらが泣きそうになっててどーすんだよ。

いい部下を持ったよな…)

だからこれ以上心配かけないように俺はニカッて出来るだけいつもみたいに笑って席を立つ。

名前も知らない女の子。

ココに通った期間は結構長かったけれどいつまでもこんな事していられない。

 

 

 

 

「き、今日はたまたま来ないだけかもしんねーぜ?ボス!」

「いーんだよ。」

確にそうかもしれないけど、何だか俺にはもう彼女はココを通らないような気がしたんだ。

(終止符を打つ、良い機会だろ…)

それに今日は13時にリボーンが人を連れてくる予定だから帰らないと…殺される。

そしてもしかしたら仲間がまた今日一人、加わるかもしれないのだ。

何でもリボーンも認めるスゴ腕らしく本人もキャバッローネを希望していて後は俺次第らしい。

そんな大切な日に何をしてんだ、俺は。

どうしたって俺はマフィアのボスだし5000人もの命を預かってるんだ、俺がしっかりしなくては。

いつまでも私事でうじうじしてる暇なんて無いのだから。

うつ向く部下たちにもう一度礼を言って帰宅を促し、店から出ると…

 

 

 

「チャォっス!迎えに来たぞ」

…。

「リボーン!?む、迎えにって…」

「どーせお前のアジトで待っていても時間通りに帰ってこないと思ってな」

待たされるのは嫌いなんだ、と付け足して店の前にいたリボーンがニッっと笑った。

「え?」

「最近お前がココに通いつめているのは知ってたからな、それにコイツもお前に会うならココがいいって言ってたんだ」

「…は?」

状況が飲み込めずに立ち尽くしていると、今までリボーンの横にでうつ向いていた人物がスッと俺の前に出てきておじきをした。

「この度キャバッローネへの移動を希望し、挨拶に伺わせて頂いたです」

ご検討よろしくお願いいたします、と澄んだ声で挨拶し顔を

…あげた。

 

 

 

 

「…っ!?」

見るとそれは、あの、彼女で。

「…う、そ…だろ…」

思わず呟かずにはいられなかった。

部下たちも驚いた様であっと声をあげている。

彼女が、俺と同じマフィアで、俺のファミリーに…?だってつい一週間前までは名前も職業も知らなかったのに?

 

「…驚かせちゃいましたか?」

未だにぼーっと立ち尽くしていた俺に彼女ーは少し笑って訪ねてきた。

「キャバッローネには女の部下は居ないと聞いたので…やはり駄目でしょうか?」

「…あ、いやそんな事は…」

の腕は確だぞ。今まではボンゴレの極秘部隊に居たくらいだ」

9代目の許可は得てるからな、と付け足してリボーンがひょいとの肩に飛び乗った。

 

 

…つーかんな事初めて聞いたぞ?凄腕って言うから男だと思ってたし。

(おめーが勝手に勘違いしただけだぞ。性別なんて聞かなかっただろ)

いろんな事が頭を駆け巡ったけれど、いつまでもこんな町中につっ立ってる訳にもいかない。

それに、

すでに答えは決まっているのだから。

 

 

俺は一度咳払いをするといつもみたいに笑ってに手を差し出した。

「もちろん、大歓迎だぜ?これからよろしくな、!」

「!はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※in the キャバッローネ's car

「ところで何でココに来てくれたんだ?」

「?…ああそれは初めてあなたを見た思い出の場所だからです」

「は?」

「あなたがいつもこのカフェに居るから遠回りしてココを通って市場に通ってたんですよ?移動希望理由もそんなかんじです」

「…!?///」

 

  

   

    

     

      なんかクソ喰らえ

(なんかやっぱちょっとだけ距離が縮まった気がす「これからよろしくお願いしますねボス」…ああしまったオレボスだったんだ!)

 

 

 

 

 

 

 

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ボスと部下っていつも一緒だけど結構壁は厚いかもしれません

さぁディーノさんの苦悩の日々がスタートです!的なお話(すいません)        (061209)