「…なぁ」

「んー?」

「ホントに切っちゃっていいのかよ?」

 

 

 

ただ何となく、髪を切ろうと思った。

もちろん失恋した訳じゃないし、イメチェンしたい訳でもない。

 

「せっかくずっと伸ばしてたのに」

 

もったいないよな、と続けて、ディーノは壁に寄りかかった。

私は鏡を見たまま髪をとかす。

 

 

 

 

 

「うん、ばっさり切っちゃう」

 

 

確に、ずっと伸ばしてきた髪を切ってしまうのに何の躊躇も無いと言ったら嘘になる。

…どっかの鮫じゃないけど、願かけみたいなモノも含まれていたし。

でもそれはもう叶ったからいいんだ。

否、ソレに頼りたくなくなったっていうのも有るんだけど、ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

髪をひとまとめにして、首より少し下のところにハサミを合わせて。

数センチ指を動かせば、私の10年はあっさり散った。

腰まであった髪を、首までに。

用意しておいた新聞紙に髪を置くと、今度は髪を揃えなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…でも俺は」

「ん?」

がショートヘアだった時の事、ちゃんと覚えてるぜ」

「…」

 

 

私がショートだった頃、私達は出会ったんだ。

それ以来、ずっと伸ばしてきた髪だから。

それは丁度、

 

 

 

 

「…10年って、長い様で案外短いのかもな」

「…そうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで出会ったのが昨日の事の様に思い出せるの、私だけじゃなかったんだね。

 

 

 

 

 

 

「…よし、終わり!」

「お前相変わらず器用だな」

「そう?」

 

使い終わったハサミを拭いて、辺りを簡単に掃除する。

切った髪は全て包んで、ゴミ箱へ―

 

 

 

、こっち向いて」

 

振り向けば思いきり抱き締められて。

 

「…うん、可愛い」

「…何よそれ」

 

笑いあって、口付けを。

 

 

 

 

 

 

 

「ディーノは髪、伸ばしてよ?」

「あぁ」

「この戦いが終わったら、切ってあげるから」

 

「…ああ、だから、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ何となく、髪を切ろうと思った。

もちろん失恋した訳じゃないし、イメチェンしたい訳でもない。

…否、“ただ何となく、”は嘘ね。

そう、だってこれは“覚悟”だから。

長い髪が戦闘に邪魔だというのはある。

でも、今までそれでやってきたんだ。

だからこれは、覚悟。

今までの自分を、越える為に。

”のトレードマーク、長い髪にの刺青、そんなのは昨日で終わりだ。

 

 

 

 

 

 

「…だから、絶対帰ってこいよ」

「…大丈夫。約束する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傾いた未来を乗り越えていく為に、僕らは。

絶対死なない、って約束

 

 

 

 

「行ってきます」

 

 

 

 

 

 

 

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突発ネタです。

今週のジャンプでディノの後ろ髪が少し長かったのでつい…苦笑 

うちのヒロインさんはフリーの殺し屋という設定なので(汗) キャバとボンゴレの間に…ね?(ヲイ)

では、読んで下さってありがとうございました!    (070831)