「さぁどうした?お前の番だぞ?」
目の前の机に置かれたのは一丁の銃。人数は私を含めて6人。弾の数とぴったり。もっとも、実際6発とも入ってるいるわけではもちろん無いが。
「…」
「どーした?怖じけついたか?跳ね馬の女さんよォ」
そう、いわゆるこれはロシアンルーレット。入ってる弾は3発と言っていたけどおそらく1発。持てば分かる。つまりこれは裏パーティーと称した私の暗殺だ。ディーノに敵わないからって恋人の私?はっ、馬鹿にするのもいいかげんにしなさいよ。
「顔色が悪いぜ?」
「心配しなくても弾は3発、俺らのうち半分は一緒に死ぬ」
一緒に死ぬ?冗談じゃないわ誰が貴方たちなんかと。どうせ死ぬならディーノの側で、って随分前から決めてるのよ。
「別に怖じけついてないわ」
言って、銃を自分のこめかみへ。指をかけて、引き金を。
ゆっくり引いて、さて結果はどうかしら?
「っ、!!」
「!」
「「!?」」
その時派手に扉が開いて、男が飛込んできた。金髪の。…ディーノだ。
「何で、」
「おまえ、」
「おっと、近寄るんじゃねーぞ跳ね馬」
周りにいた5人が、一斉に私に銃を向ける。ほら、やっぱり。度胸だめしと称した私暗殺計画よ。私なんか殺したって、ディーノは生きてるのにね?だってそうでしょう?私そんなに弱い男に惚れた覚えないもの。
「神聖な運試しを邪魔しちゃいけねーなァ コイツは自らこの話にノってきたんだぜ?」
「っ!」
「ボス!」
ロマーリオの不安そうな顔と目が合った。なんて顔してるの。
「…銃を下ろして 私が持ってるモノで十分なはずよ」
私がそう言うと5人は驚いた顔をしたが大人しく従った。
「でも引き金を引く前に3つ言わせてもらうわ」
「、何だ?」
まずは主犯の顔を見て
「この銃に弾は1つしか入っていない」
「!」
そしてディーノの顔を見て
「そしてそれは最初の一発」
「!お前、」
1人の男が声を荒げたけれど無視して
「だから死ぬのは私だけ…」
「!!!」
目をつむって指を引いて。
そして間抜けな銃声がひとつ。
「!!何で、貴様!!」
「さて、何故でしょう?」
そう、間抜けな銃声がひとつ。
カラン、といったじゅうせいひとつ。
「あら?私の感が外れたのかしら。はい、次は貴方の番よ?」
言って、主犯の額に銃口を。主犯は驚きを隠せない表情で固まっている。しかたないか、入っていた筈の弾が、確に撃ったのに出てこなかったのだから。
「順番は運だもの、しかたないわよね?」
「や、止めろ、」
「時間を短縮したいから、変わりに私が撃ってもいい?」
「やめ、」
パン!と景気の良い音がして、目の前の男が真っ赤になった。
「貴様、!」
「!」
パンパンともう二発。
「大丈夫、弾は全部で5つ入ってるから、皆仲良く死ねるわよ!」
それを合図に待機していた敵が一斉に飛込んできた。
もちろん、キャバッローネが負けるはずもなく。
「…お前、もう少し考えろよ」
「考えたわよ?どうやったら上手く囮になれるか」
「…分かってねぇ」
大丈夫、計画は万全。敵の仕様銃も調査済み、同じモノを手に入れるなんて容易いし、摩り替えるのだって簡単な事だ。いざという時の為に敵の注意を引く役の部下も忍ばせていたし。…まぁたまたまディーノ本人が飛込んできたのだけれど。それより、ボスが簡単に現場に出てきちゃ駄目でしょうが。分かったよ、と言って溜め息を吐いて、私の頭に手をのせて言う。任務完了よ、ボスと言ったら止めろよお前のボスじゃねぇだろ、と返ってきた。…そう、"対等"という関係が一番好ましいわ。
「…サンキューな」
「…どういたしまして」
さぁ帰りましょう?
ドアを開けて鍵を閉めて、二人っきりになったら私たちはマフィアでも何でもないただの人間になって、抱き締めあって心の中でつぶやくのよ。
今日も生きててくれて、ありがとうって。
そうして
今日も、
日は落ちる
END・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
思い付きです。
ロシアンルーレットを華麗にやってのけるヒロインが書きたかったのです 笑 (070519)