初めて交した会話も覚えています。あたしが名前を名乗ったら「殿ですか。素敵な名前ですね」おぬしに似合っています、と彼はそう言って握手をしたのです。そしてあたしはそんなバジルに恋をしてしまったのでした。とは言ってもバジルに会ったのはもう8年くらい前ですからあたしはもう8年も片想いしている事になります。…いつまでもグズグズしていてあたしらしくないと思うんですが、もし想いを伝えて拒まれたらあたしは生きていけないような気がするので(と言うか生きていけない)それはただの予防線なのです。
「あれ?」
ふと床に視線を移すと、そこにはバジルが着ていたと思われる上着が置いてありました。
「しわになっちゃうよ、バジル」
あたしが上着を畳もうと手に取るとバシルの良い香りがしました。(別に変態とかじゃないですよあたし!)ただ何ていうか…安心できる暖かさで、思わずぎゅっと抱き締めてしまいました。(べべべ別にコレをバジルだと思うとかそんなんじゃないよ!)(ってかああー余計しわになるってあたしのバ!!!)そうしていたら何か眠くなってきてしまい、あたしの意識はそこで途絶えてしまいました。
「…ん」
しばらくぼーっとし、ようやく自分が寝てしまっていた事を知りました。
「…拙者は…せっかく殿の帰りを待っていたというのに」
顔を上げると何かが肩から落ちてしまい慌てて拾うと殿の上着…。
「殿?」
気付けば床に拙者の上着を抱いたまま眠る殿が居て驚きました。幸せそうに眠る殿の顔を見ていたらすごく拙者のココロも暖かくなってきて、思わず頬に触れました。殿が寝ている時しか触れられないなんて拙者らしくないのですが、どうも殿の事となると余裕が無くなってしまうのです。…おぬしを好きになってからもう8年も経つというのに。(自信が無いのかも知れませんね。おぬしは拙者よりずっと強いからもしこの想いを伝えても護りぬけるのか、という)
「…こんなところで寝ていちゃダメですよ、殿」
しばらくして、殿をベットに移そうと抱き上げました。思ったより軽くてキシャな体つきで、あんなに強くてもやっぱり女の人だと改めて思いました。
「あまり無理しないで下さいね」
ベットに下ろしても未だ拙者の上着を離そうとしない殿に苦笑しながら、このままここに居ると理性が抑えきれないかもしれないので部屋から出ようとすると
「…ん…バジ…ル」
「…っ!」
ああもうどうしてそんなに可愛い事ばかりするのですかおぬしという人は。ほら、おぬしがそんな事言うから、拙者がどれだけ我慢していたか知っていますか?
キスをしても幸せそうに眠る殿を見て溜め息をつきました。時計を見るともう7時だったので「…夕食、作ってきますね」と呟いてもう一度、今度は殿の額にキスをして部屋を出ました。
「…やってしまいました」
いくら殿が気付いていなくても、自分の中の殿への気持ちを再確認してしまい、顔が熱くなるのが分かりました。
「…殿が起きたらどんな顔すれば良いのですか…」
「…なに、今の…?」
本当はベットに移された時目が覚めていたのですが起きるに起きれなかった、のです…。
「ああもう!どんな顔して起きていけばいいのよ…」
未だに熱いくちびるを手で押さえながら、布団を顔まで被りました。
好きすぎて、弱くなる
あと一歩、が踏み出せなくてもう8年も過ぎている
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久バジル夢です!一目惚れシリーズ(!?)3作目…汗 (060617)