「はい、殿との約束は必ず守ります。」
…それなのに。
ちょうどあたしの仕事が片付いた頃、ディーノからバジルが怪我して廃墟になった病院に居る、っていう連絡を貰った。
「でも命に別状は無ぇよ、よく鍛えてるな。」
「ありがとう、あなたが助けてくれたの?」
「まぁ、ギリギリだったけどな。ツナの事とかほとんどバジルが守ってたしよ。」
「そう。知らせてくれて助かったわ。今から行くわね。」
ああ、そうだな早く来てやれ。そう言ってくれたディーノにもう一度お礼を言って、最低限必要なものだけを鞄に詰め込んであたしは急いで家を出た。
早くバジルに会いたくて病院の玄関のドアをおもいっきり蹴ったら見事に外れてドォンという音と共に倒れる。
(ちょっとびっくりした)
「病院では静かにしろよ?」
響くぞって声がした方を見たらディーノが壁に寄りかかっていた。(どうしよう今のでバジル起きちゃったかしら)
「…悪かったな。先に言っとくが今回バジルは囮だった。」
お前には言っとけば良かったな。そう言ってもう一度あたしに謝った。
…あなたが謝る事じゃないでしょう?それに私だって――
「知ってたわ。バジルが発った後あの人に教えて貰ったもの。」
そう。知ってたのよ。バジルにだって伝えようと思えば間に合った。危ないから帰ってきてって。
でもあたしの勝手でそんな…あの人が悩んで決めた事を、バジルの決意を、無茶苦茶には出来ないもの。
「そっか…やっぱ聞かされてたか…よくがんばったな。」
そう言ってあたしの髪をくしゃりと撫でる。
(子供扱い…)
「一応、バジルには俺から伝えといたから…」
ああ、何処まで優しいの。
「…ありがとう。」
「ま、かわいい妹分の為なら、な?」
そう言ってちょっと切なそうに笑った。
「嬢、そろそろバジルが起きる頃だぜ。」
薬を飲ませてくれたらしいロマーリオが奥から出てきた。
あたしは二人にお礼を言って、今度こそバジルの居る病室へと駆け出した。
もちろん足音は立てないようにした。
ドアを開けたら結構綺麗な病室のベットに傷だらけのバジルが上半身だけ起こしてこっちを見ていた。
「っえ!?バジ…」
「ぁ、来てくれたんですね、殿!」
そう言ってまるで何も無かったかのようにあたしに笑いかけた。
そんな。
何笑顔で―どうして笑ってられるのよ?
怪我してるじゃないの。
痛くて辛いなら無理に笑わなくていいのよ??
「…もう起きて大丈夫なの?」
「はい。毎日薬を頂いてますから大分良くなりました。
それに、せっかく殿が来てくれたのに寝ているわけにはいきません。」
来てくれて嬉しいです。なんて。また笑う。
…あたしの事はどうでもいいのよ。
「ダメ。まだ治ってないんだから寝てなさい。」
そう言ってバジルの肩をそっと押したら意外にそのままベットへ戻ってくれた。
けど…バジルがじーとこっちを見てる。(何よ。切なくなるからやめて)
「…怒ってます、か?」
…いきなり何を言い出すの。
「…どうして?」
「拙者が殿との約束を守れなかったからです。」
倒れちゃいましたから。
…何言ってるの。
ホントに何言ってるのよ。
「…あれはそういう意味じゃないよ?バジルが倒れたのはディーノ達が来てからでしょう?
あれは一人の時に倒れたら危ないからって意味だから。」
こんなになってもあたしとの約束の事気にしてるの??
馬鹿だよ、バジル。
「だからバジルは約束破ってないよ?」
出来るだけ、あたしは今あたしが作れる精一杯の笑顔でそう言った。
そう言ってもまだバジルは不安そうな顔してる。
「でもまだ殿怒ってませんか?」
…なんで?
なんでよ。
どうしてそんな―
「…何でこんな時まであたしの事気にするの。」
気付いたら口に出してた。
え?って言うバジルの小さな声が聞こえたけどもうダメ。
「今回バジル囮だったのよ?何でそんな笑ってるの。何で―。あたしの事なんてどうでもいいのに!」
静かな病室にあたしの声だけが響いた。
感情的になっちゃダメじゃない。
一番辛いのはバジル本人なんだから。
ああもうやだ。涙で前が霞んできた。
そしたらまたバジルが上半身だけ起こしてあたしを抱きしめた。
ほら、あたしが泣くから、寝てろって言ったのはあたしなのに起こさせてどうするの。
けど涙が止まらなくてバジルが痛くない程度にあたしも抱きついた。
「心配かけてすみませんでした。囮のことは…指輪が無事なら拙者はそれでいいですから大丈夫です。」
大丈夫なわけないでしょう?
…あの人が今回の仕事にバジルを選んだ理由だって分かってるわよ。
バジルがこーゆー人だっていうのもちゃんと分かってる。
「…ごめんね、あたし知ってたの。バジルが囮だって。」
知らせちゃいけなかったけど―
「バジルが傷付いてるのに、あたし何もできなくてごめんね。」
言ったら余計に涙が出てきた。
「そんな事ないです。殿は拙者の事心配して来てくれたじゃないですか。拙者は殿に会えて、もっと元気が出ました。」
「だけど…」
「むしろ拙者が囮だと知って辛かったのは殿の方でしょう?
それに殿はいいと言いますが拙者にとって殿は一番大切なので気になってしまうはしかたない事なのです。」
どうしてさらっとそんな事が言えるの。
(一瞬今までの全ての感情がふっとんでしまったじゃない。殺し文句なんて何処で覚えて来たのかしら。)
それでもその言葉が純粋に嬉しいとか思ってるあたしはなんて酷い人。
バジルがこーゆー人だって分かっててそれに甘えてる自分に腹が立つ。
「…ごめんね。ありがとう。」
そう言ってさっきより少し強めにバジルを抱きしめた。
「凄く嬉しい…けどバジルがあたしを気にかけてくれるようにあたしだってバジルが大事なの。だからお願い。」
もっと自分を大切にして?
あたしはあなたの一番じゃなくていいから。
あたしの事気にしてくれて嬉しいけど、少しずつでもいいから、もっと自分を優先してよ。
あたしに向けてくれる優しさ(の全てでもあたしはかまわない)を、自分自身に向けてあげて。
それを聞いたバジルはまた笑って「はい。」と言ったけど、多分あなたは頭で理解しても躰では分かってないのでしょうね。
あたしがあなたに一番何
を望んでいるかあなたは
知らない
でもいいわ。だってこれは『約束』じゃなくてあたしからの『お願い』だから無理してバジルが守る必要ないんだもの。
(今回みたいにバジルがあたしの事気にしなくて済むわ)
だからそんな時はあたしがバジルを守るから。
バジルが無事ならあたしは全てを捧げられる。
そしてそんな事を思うあたしはあなたが死んだら生きていけなくて、いつもいつもあなたに頼りっぱなしの弱い人なの。
END
初バジルです。。…そして撃沈…。何を書きたかったのかきちんと表現出来てないですね。
とりあえず文才欲(死
で、ではでは最後までお読み下さりありがとうございました!! (060409)