「うわ…」
ここはイタリア。冬はそれなりに寒いけれど、こんなに雪が積もったのは久しぶりだ。でもこの景色を見ると地球温暖化はまだ大丈夫っぽいな、なんて思ったりして。それくらい、凄い。
まだ朝の六時前。キャバッローネの広い庭には足跡一つ着いていない。もう本当に、一面真っ白でキラキラ光ってる。寝っころがったら、気持いいだろうな。
「…ディーノ!」
とりあえず振り返って、まだベッドで熟睡する彼を起こそうと声をかける。けど返ってきたのは「ん〜」という100%まだ夢の中な反応だけで。
「……」
じゃぁこれでどうだ、と窓を全開にすると、入ってきた冷たい空気に少し肩を震わせたけど起きはしない。
「…ディーノ!!」
「うわぁ!」
ということで困った私は最終手段に出ることにした。その技の名は、ダイブ。勢いよく飛び付いたら予想通りディーノが情けない声をあげて覚醒した。
「おはよ」
「…はよ?、 え?おい?」
「雪遊びしよ!」
起こすやいなやクローゼットからコートを取り出して着る。
「え?…ぶっ!」
「先行ってるよ!」
起きたばかりでまだ思考がはっきりしていないディーノにもコートを投げると顔面で受け止めていた。そのまま呆気にとられているディーノに笑いかけて、窓から外に飛び降りた。
「うゎ、ちょ!」
「あはは」
私の後を追ってきてくれたディーノに雪玉を投げる。目が覚めてきたのか仕返しされる。まるで幼少の頃に戻ったみたいに、雪玉を投げあった。一面銀世界だった庭も、今では沢山の足跡がついている。
「あ!ディーノあれやろうよあれ!」
「どれ?」
「結構前に日本でCMやってた、相合い傘のヤツ!」
私がそう言うとディーノはああ、と思い出したみたいで、その辺に落ちていた木の棒を拾うとガリガリと雪に書き始める。私も手伝おうと思ったけれど、生憎丁度良い木は他にもう落ちていなかったから、見守る事にした。辺りは、静か。まるでこの世に私たち二人だけみたい。なんて。空を見上げながらまた降り始めた雪に目を細めた。
「ほら、」
「…ありがとう」
書き終わったディーノがニカッって笑って私に手を差し出してきた。左手を伸ばして、その手をとって。
「「せーの!」」
二人一緒に、後ろに倒れる。雪はやっぱりひんやりと冷たかったけど、繋いだ手が暖かかったから、それでも良いと思ってしまった。
「雪、綺麗だな」
「…うん」
地に寝転んで、空を見上げる。視界いっぱいにひらひらと舞う雪が映って、キレイ。しばらく二人でぼう、とそれを眺めていたけど、ふいに繋いだ手が強く握られた。
「…なに?」
「相合い傘ってさ」
「うん」
二人とも、空を見上げたまま。辺りは静かで、まるでこの世に私たち二人しか、居ないみたいだ。
「…真ん中の棒、邪魔だよな」
「…あぁそれ私も思った」
確に同じ傘の中に入ってるし、実際真ん中の棒が無ければ傘じゃない。でも、まぁあまりしないけど、今の私たちみたいな時は、確に邪魔だ。二人しか居ないのに、まるで壁に遮られているみたい。
「」
「ん?」
「そっち行っていい?」
「…うん…ってうわ!」
「っ!!」
言ったら急にディーノが起き上がって、そのまま私の方を向いたんだけど、手が繋がれたままだったからバランスが崩れて私に覆い被さる状態になった。
「…大丈夫?」
「…俺ら何してんだよ」
手を離して二人で笑った。空いた手をディーノの背中に回してみる。顔が、近い。
「……、」
どちらともなく、口付けて。背中はまだ冷たいけど、体は暖かくなった気がした。
「…すき」
「…俺も、」
ぎゆっと抱き締めあって。きっと周りからみれば奇妙な光景だろう。この寒いのにコート一枚で雪に埋もれて抱き合っている男女など。けれど。
「愛してる」
nevicare,giardino,
due persone
今この世界には私たち二人きりだから、そんな事はどうでもいいのだ。
END・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
リクをして下さった茅野つかさ様に捧げます!
ごめんなさい冬ネタなのに…遅くなってしまいました。
そしてあんまり甘くない… 汗
ありがとうございました!
ローズドロップス/秋山美雨羅 (070311)