「あー?寒いつったのじゃねーか」
「…いやうん、そうなんだけど」
今私はとても窮屈です。
今日は久しぶりに珠ちゃんが徹夜で家に帰ってこれないので笑ちゃんの家にお邪魔してる訳なんだけど。
まず目の前には部屋の角度的に言うと少しナナメに置かれたテーブルがあって、そのテーブルの上には夕飯の後デザートとして私が作った和菓子があって、その向こうのテレビを見ている状態です。
…ここまではいいんですよ、ここまでは。
問題は、うしろ。
「!ちょ、ちょっと!!」
「お前イイ香すんだもん 落ち着く」
「…(私は落ち着けないんだけど)」
いきなり首に息はかかるしお腹に回された腕のせいで私のお腹も熱いし心臓もきゅんとしてとても落ち着ける状態なんかじゃない。
…そうなんです。
問題は、うしろ。
私の背中は笑ちゃんとぴったりくっついていて、笑ちゃんの背中はベッドとぴったりくっついてる。
幸せだけど、苦しい。
視線の先で光るテレビからは今話題の恋愛ドラマが流れていたけど、私も、私の肩に顎を乗せて同じものを見つめる笑ちゃんも、きっと内容になど興味は無い。
なんとなく、見ているんだけど観ていない感じ。
私達にとって大切な事はたまの休みに二人で食事をし、他愛もない会話をし、床に座り込んでテレビを見る事では無いから。
なら何故テレビをつけたのかと言われれば答えは多分”なんとなく”。
ただ、たまの休みに同じ空間に二人一緒に居て、のんびり過ごせればそれでいい。
そう思うのは、私だけかなぁ。
「…っ!」
「?寒いのか?」
「…うーん少し」
いや十分暖かいというか熱いはずなのに、この季節に床に座るのはやっぱり少し寒いようで、いきなり背中を走った寒気に震えてしまった。
足が、寒い気がする。
でも今の時代(結構昔からだけど)エアコンという便利なモノが有るから室温を上げようと思えばいくらでも出来るのに、それをしないのは私が笑ちゃんともっと触れ合いたいからだと思う。
…これは私だけじゃなくて笑ちゃんもそう思ってくれてたら、嬉しいなぁ。
「…やっぱエアコン上げるか?」
「…ううん、このままでいいよ」
振り向いて答えたら、バーカ風邪ひいたらどーすんだ、と返ってきて私の額に笑ちゃんが自分の額をくっつける。
…恥ずかしいけど、たまにはいいかな。
折角久しぶりに明日お互い非番だし。
「…暖房器具より、笑ちゃんに暖めてもらいたいなー、なんて」
恥ずかしかったけど、思いきって言ってみたら案の定視界いっぱいにびっくりしたような笑ちゃんの顔が映る。
けど、すぐに笑って、いつものかっこいい笑ちゃんの顔になった。
「…から誘ったんだからな?覚悟しろよ?」
「…うん」
体ごと向きを変えて、首に手を回して。
ゆっくり瞳を閉じて、キスをした。
I cannot stop thinking
of you with love
even for an hour.
だから今ここにある最大級の幸せを、しっかり抱きしめて
END・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
すみません。甘くしようとしたらこんな事に…汗
タイトルもホントごめんなさい
リクをして下さった御崎暁様に捧げます!ありがとうございました。
ローズドロップス/秋山美雨羅 (070305)